第12話 思うだけの魔法
オークそっくりと蔑まれていた少女エルフィナ。
その正体は、特別な力を持つ女神の生まれ変わりだった。
神々が道を外れた時――
世界は一人の少女を呼び覚ます。
「どうしたアレックス?」
「ウグウグウグッ……ウグウグウグッ……」
「エルフィナ嬢……」
国王が怪訝な顔をする。
「お前何か?」
「いえ、陛下。私は何も……」
エルフィナは慌てて首を振る。
(エルフィー、何したんだ?)
マックスが小声で聞く。
(どうしよう……私にもよく分からない……
これ以上聞きたくない……
そう思ったけれど……まさかそれで?)
「だ、誰か……何とかしてやってくれ……」
ラインハルトが焦る。
「父上」
マックスが言った。
「もしかすると、エルフィナ嬢は心で強く思うと、
それを現実にする事が出来るのかもしれません……
兄上が、あまりにもエルフィナ嬢を、
不快にさせたので、
もうこれ以上聞きたく無い……
そう思った事で言葉が出せなくなったのでは?」
「それが……魔法の正体だと?」
ラインハルトが唸る。
エルフィナは慌てて首を振った。
「申し訳ありません……!
本当に分からないのです……!」
「エルフィナ嬢……」
ラインハルトが困ったように言う。
「何とかしてやってくれんか?」
「そう仰いましても……」
エルフィナは戸惑いながらアレックスを見る。
「どうしたら良いのか……」
少し考えてから、恐る恐る声を掛けた。
「えっと……殿下?
もうお話ししても宜しいですよ?」
「ウグウグウグッ……!」
「あっ……ダメですか?」
「エルフィー」
マックスが肩をすくめる。
「心の底からそう思わないと、
ダメなんじゃないか?」
「心の底から?」
エルフィナは困った顔をする。
「うーん……どうしよう……
難しいかも……」
「これ以上、何も言われないって、
安心出来なきゃ無理か……」
マックスは顎に手を当てた。
そしてアレックスを見る。
「ん?
兄上、瞬きは出来てるな?
瞼は動くんだな?
ってことは全身麻痺じゃないな……」
国王が思わず聞き返す。
「お、おいマックス……?」
「父上、ちょっと試します」
マックスはニヤリと笑った。
「兄上、聞け。
イエスなら瞬き3回。
ノーなら1秒目を瞑る。良いか?」
「ウグウグウグッ……ウグウグウグッ……」
「そうじゃなくて……」
マックスは苦笑した。
「良いか?分かったのか?」
〝パチパチパチ〝
「おお、出来るじゃないか」
マックスは面白そうに笑う。
完全にアレックスで遊んでいるようだった。
「じゃあ質問するぞ」
少し身を乗り出し、言った。
「もう二度とエルフィーに関わらないと誓うか?
イエス?ノー?」
沈黙。
そして――
〝パチパチパチ〟
三回の瞬き。
エルフィナがホッツとした様に溜息をついた。
「安心したか?エルフィー……
兄上……もしかしてもう動けるんじゃ?」
「ハアハアハア……助かった……
き、貴様~!ウグウグウグッ……」
また止まった。
「……私、何もしていませんよ?」
エルフィナは真顔で言う。
「では何故?」
国王が困惑する。
「もしかしてさっきの術?が、
完全に消えたわけではないのでは?
兄上が、
もうエルフィーに関わるのはやめよう……
そう本心から思った時に、
動ける様になるんじゃないか?」
「そうなのか?」
「分かりません……」
エルフィナは素直に答える。
「本当に自分でも、
自分の力がよく分かっていないのです……
でも、私もそんな気がします……」
「プププッ……だろ?
いきなり〝貴様〟とか言うからだろ?
バカ兄貴……」
マックスが吹き出す。
「もう関わりません……そう言えよ?
あ?口が動かないから言えないか?
じゃあ心で思え……本心から……」
「ハアハアハア……う、動ける……」
「ほらな」
マックスは笑う。
「兄上、今後は良からぬことを考えない事だな」
そしてエルフィナを見て言った。
「それにしても面白いなエルフィー。
これって呪いみたいじゃん?」
「あっ……」
エルフィナが小さく笑う。
「確かに……」
「そうだ……」
エルフィナはラインハルトを見る。
「陛下……
陛下にお願いがございます」
国王の顔が一瞬強張る。
「……な、何でしょう?」
エルフィナはくすっと笑った。
「陛下に呪いなど掛けませんよ。
そんな事、本当に出来るかどうかも分かりませんし」
「そ、そうか……」
国王は露骨に安堵した。
「助かる……
それで、何だろう?」
「アルガルド先生にもお願いしてあるのですが」
エルフィナは少し声を落とした。
「一昨夜の奇跡は……
私の祈りが神に届き、
神が助けてくださった……
そういう事にしておいて頂けませんか?
夜空から光の柱が降りてきた事は、
遠くからも目撃されている様ですし……」
「ふむ……」
ラインハルト王は考える。
「何故その様な事に?」
マックスが代わりに答えた。
「この件が他国に知れ渡れば、
エルフィナ嬢を放っておく国はないでしょう」
「なるほど……」
ラインハルトは頷いた。
「そういう事か……分かった」
この件は神の奇跡という事にしておこう」
「ご理解頂きありがとうございます」
エルフィナは優雅に一礼した。
「で?お願いとは、それだけであるか?」
「はい……あっそうだ。
帰りに王妃陛下の部屋に、
寄らせて頂いても宜しいでしょうか?」
「ああ、もちろん構わんよ……
あいつもエルフィナ嬢に会いたがっていたんだ。
しかし、病気が進行してな……
ベッドから起き上がれんのだよ。
行ってやってくれるか?」
エルフィナは優しく微笑んだ。
「ええ、その事は、
マックス王子から聞いていましたので……
王妃陛下は、
私の数少ない理解者でしたので……
陛下、それでは私はこれで失礼致します」
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