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第11話 ご冗談を

オークそっくりと蔑まれていた少女エルフィナ。

その正体は、特別な力を持つ女神の生まれ変わりだった。

神々が道を外れた時――

世界は一人の少女を呼び覚ます。

「陛下。マックス王子が、

 エルフィナ様をお連れです」

「うむ。入れてくれ」

 扉が開く。

 玉座に深く腰を下ろした、

 ラインハルト王が待っていた。


「父上。ただいま戻りました」

「王子自らご苦労であった」

 ラインハルトは顎を撫でる。

「そう言えば、お前は()()と仲が良かったな?」

 マックスは眉を上げる。

()()とは何ですか?

 エルフィナ嬢の事ですか?

 最初に申し上げておきますが――」

 声の調子が変わる。

「王立学園のアルガルド学園長。

 そして現場を調査した魔法院のフェルナンド院長……

 二人の話によれば。

 排除したいものだけ消滅させ、

 逆に傷付いた者を再生させる……

 しかも一つの魔法で同時に。

 その範囲は3kmにも及んでいたそうです」

「3kmだと……?」

 ラインハルトの顔から血の気が引いた。

「しかも」

 マックスは続けた。

「それほどの未知の極大魔法を放ちながら、

 エルフィナ嬢の魔力量は、

 少しも減っていない様に見えたと……

 これがどう言うことか、

 お分かりになりますよね?」

「何が言いたい」

「エルフィナ嬢を軽く扱わない方がいい……

 という事です」

 マックスは静かに言った。


「一つ間違えればーー

 国が滅びますよ」

 マックスの声色が変わった。

 先ほどまでの軽い調子は消えている。

 部屋の空気が一瞬で張り詰めた。


 ラインハルトは慌てる。

「いや……言葉のあやと言うか……」

 咳払いをする。

「別に軽くみてるわけでは無いぞ?」


「で?エルフィナ嬢はどこだ?」

 辺りを見回す。

「来ておるんだろ?

 ん?そこの娘、入室を許可した覚えはないぞ。

 誰じゃ?」

 目を細める。

「おま……えは……」

 ラインハルトは驚いた。

「……それにしても……綺麗な娘だな」



 その様子を見ていたアレックス王太子が、

 勢いよく立ち上がった。

「ちょ、ちょっと待て!

 お、お前は……まさか……」

 王太子の目が、

 信じられないものを見るように見開かれる。

「……エルフィナ、なのか?」

「他の誰に見えまして?」

 エルフィナは、静かに首を傾げた。

「アレックス第一王子殿下」

 その声は、いつもと同じ。

 だが、その姿は――あまりにも違っていた。

 王太子は呆然としながら、国王の方を振り返る。


「父上もよくご覧ください。

 何度も会っていますでしょう?誰に見えます?」

 マックスが問う。

「た、確かに……その顔は……」

 国王は目を凝らし、しばらく見つめる。

「……エルフィナ嬢……」

 そして、思わず呟いた。

「どういう事だ……?

 これ程までに……美しい娘だったのか?」

 何故……わしは、

 醜いと思い込んでおったのだ……?」


「お言葉を、宜しいでしょうか?」

「……うむ。許す」

「呪いで、オークの様に醜く見えていた様です」

 エルフィナは落ち着いた声で言った。

「本質を見抜けるアルガルド学園長が、

 そう仰っておられました。

 以前、その様に申し上げた事がありましたが……

 お忘れですか?」

「む……」

 国王は、記憶を辿るように目を細めた。

「確かに……その様な話は聞いた……

 だが……本当だったとは……」

「まあ、そう言う私自身も半信半疑だったのですが」

 エルフィナは小さく肩をすくめる。

「で、お呼びとの事ですが。

 本日は、何用でございますか?」

「いや……」

 国王は咳払いを一つした。

「他でも無い。一昨夜の事を聞きたくてな。

 エルフィナ嬢よ、

 お前……どんな魔法を使ったのだ?」

「それは……」

 エルフィナは少し考える。

「私にも、よく分かりません。

 妹メアリナに危険が迫り……無我夢中で……

 本当に私が魔法を放ったのかどうかすら……」

「そうなのか……」

 国王は深く息を吐いた。


「そうなのか……

 その様な魔法が存在するとは……

 誰1人聞いた事がないそうじゃ」

 エルフィナは淡く微笑む。

「もう一度やってみよと言われても、

 出来るかどうか……

 ただ――大切な人に危険が及べば、

 また出来る……そんな気はいたします」

「そうであるか……」

 ――こんな国。

 その気になれば、いつでも消し去れる。

 そんな意味を含んだ言葉だった。

 もちろん、本当に出来るかは分からない。

 これは――

 マックスと事前に示し合わせた、

 ただのハッタリだった。

 しかしーー

 そのハッタリは、十分すぎるほど効果があった。



「おい!」

 アレックス王太子が突然大きな声をあげた。

「それだけ綺麗な……いや!」

 言い直す。

「それ程の魔法を使えるのならば!

 もう一度俺の婚約者にして――」

「謹んで辞退致します」

 エルフィナは、最後まで聞かずに即答した。


「な、なぜだ!?」

 王太子は目を剥く。

「お前は生まれる前から俺の婚約者で、

 ずっと俺のことが好きで、

 嫁になりたかったんじゃないのか!?」

「ご冗談を」

 エルフィナは淡々と返した。

「醜いだの、無能だの……

 あれほど蔑まれてきたのに……

 貴方の妃になりたい等、

 思う訳がありませんでしょう?」

「いや……それは……

 お前に掛けられた呪いで……」

「ええ」

 エルフィナは、にこりと微笑んだ。

「その呪いのお陰で、

 その人の本性がよく分かりましたので……

 そこだけは、呪いに感謝すべきかもしれませんね」

「……!」

 王太子の顔が引きつる。


「失礼ながら」

 エルフィナは続けた。

「貴方には、人を思いやる事……

 人に優しくする事……

 そういうものが、欠けております」

 そして、静かに言った。

「それって……

 国を率いる王に、

 一番必要な資質なのではありませんか?」

「何だと!?」

 王太子が怒鳴る。

「言わせておけば――

「ウグウグウグッ……!」

 突然、王太子の声が止まった。

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

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