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第1話 オークそっくりと言われる少女

オークそっくりと蔑まれていた少女エルフィナ。

その正体は、特別な力を持つ女神の生まれ変わりだった。

神々が道を外れた時――

世界は一人の少女を呼び覚ます。

 ――この時の私は、まだ何も知らなかった。

 自分の中に眠る力のことも。

 そして、この光が――

 やがて神々の運命すら変えることになることも。


挿絵(By みてみん)


「お願い……止めて!メアリーから離れて!…… やめてぇぇっ!!!」

 夜空に向かい、祈る様に手を合わせ、叫ぶ少女エルフィナ。

 目の前にはもう1人、〝メアリー〟と呼ばれた少女が、

 魔族に襟元を掴まれ、持ち上げられていた

 剣を振り上げる魔族……

 今にも振り下ろされようとしていた。

「私の大切なものに触らないで!」

 間に合わない。

 どう考えても――間に合わない。

「エルフィナ姉様!早く逃げて!」

 周囲には、数えきれないほどの少年少女が、

 血を流して倒れている。


 その時だった。

「貴方を置いて逃げれるわけないじゃない……」

 エルフィナの合わせた手から、

 天へ向かって一筋の光が昇った。


 すると、それに呼応するかのように、満天の星が輝き始める。

 星々の光が集まり、

 少女の光より遥かに大きな柱となって降りてきた。

 その2つの光が混じり合い、少女を包みこむ。


 次の瞬間――

 少女から無数の光が放射状に放たれた。


 少女の身体を覆っていたであろう薄い透明の膜が、

 〝パリーン!!〟

 大きな音を立てて、粉々に砕け散った。


 すると、この瞬間を待ち侘びていたかのように、

 少女から、眩い光が溢れ出す。

 その光は水平に広がり、

 幾重もの波紋となって周囲へと拡がった。


 それは、目を開けていられない程の輝きで、

 夜のはずが、昼間と錯覚する程明るかった。

 光が薄くなり、辺りの視界が拡がってくると、

 次第に見えてくる景色……

 それは……1000人以上いたはずの、

 魔族の姿が忽然と消えていた世界。

「エルフィナお姉様……い、今の光は?」


 ーーーーーーーー


 エスティア王国、王立学園。

 この学園には、ある噂があった。

 それは……オークそっくりの少女が在籍している……



「おはようございます」

 ――……。

「おはよう!」

 ――…………。

「ごきげんよう」

 ――…………。

 少女の挨拶に、誰一人として挨拶を返さない。



「ちょっと、エルフィナお姉様?」

 後ろから声がかかった。

「登校するたびに、誰彼かまわず挨拶して歩くの、

 やめてくれない?」

 吐き捨てるように言う。

「皆んなから無視されてるの、分からないの?」

 そっぽを向いた。

「……見てるこっちが恥ずかしいのよ」

 そう言ったのは、妹のメアリナ。


 今年入学したばかりの一年生。

 エルフィナとは一つ違いの妹だ。

 誰もが認めるほどの美少女。

 先ほどのセリフからは想像できないが、

 実は誰にでも優しく、人気者だった。

 辛辣な言葉が多いものの、

 学園でエルフィナに声をかける唯一の人間だった。


 ーーそして〝エルフィナ〟と呼ばれる、

 オークそっくりだと言われる少女……

 いや……本当にオークの様な顔をしている訳ではない。

 鼻が横に広がり、ゴツい顔で、醜い……そう言う事だ。

 周りから、からかい半分で、

 オークそっくりと、揶揄(やゆ)されていた。

 学園では、他の生徒から、いない者の様に扱われている。

 しかしその様な扱いを受けているにも(かかわ)らず、

 それでもエルフィナは笑っていた。

 まるで、そんな視線など気付いていないかのように。

 それが又、哀れではあるのだが……


「やだメアリー。意地悪言わないの」

 そう言い、両手で愛おしそうに、

 メアリナの頬を撫でるエルフィナ。

「やめてよ。子供じゃないんだから……」

 そう言いながらも手を払いのけるようなことはしなかった。


「やだ……いくら姉妹とはいえ、

 あんなののに触られるなんて……気持ち悪っ!」

「何で姉妹なのにんなに違うのかしらね?

 それとも、赤ちゃんの時に顔を大怪我したとか?」

 陰口が全部聞こえてくる。



 このオークそっくりだと言われる少女エルフィナ。

 彼女は、エスティア王国でも有数の名門、

 スタンリー公爵家の長女である。

 昨年十五歳になり王立学園へ入学。

 現在は二年生。

 剣の腕は、学園始まって以来の天才。

 女子ながら、未だ一度も負けたことがない。

 学業も同様だ。

 入学以来、常に学年一位。

 それもそのはず、抜きん出た才能を持って生まれた上に、

 一心不乱に努力し続けた。

 全ては、人として認めてもらいたいがためだ。

 しかし…… 魔法だけが問題だった。

 魔法が、まったく使えない。

 魔力測定器に触れると、

 破壊してしまう程の魔力量を持っているのに、

 なぜか魔法を扱うことが出来ないのだ。

 この奇妙な現象に、王国の学者達は頭を抱えた。

 こんな例は、これまで存在しなかったからだ。


 その顔と、剣の強さから、身体がゴツい印象を与えるが、

 実際のところプロポーションは悪くなかった。

 むしろ、理想的なスタイルと言っていい。

 だが。

 その醜い顔と、魔法が使えないという理由から、

 両親からも。

 妹からも。

 エルフィナは疎まれていた。



 ――醜い?

 本当にそうだろうか。

 貴方にも、この少女は

 醜いオークに見えるだろうか?

 少しノイズが掛かった様にぼやけるが、

 やはりオークに似ているって?

 もしそうであったら、貴方も、この少女に掛かった呪いで、

 色眼鏡フィルター越しに見ているのだろう。

 その眼鏡を外して、もう一度見てほしい。

 いかがだろうか?……そうでしょう?この少女は、

 醜いどころか王国中探しても、

 肩を並べる者がいない位、美しい少女なのです。

 髪は光を受けて輝くホワイトロング。

 瞳は大きく、長いまつ毛が優雅にカールしている。

 その色は透き通るようなブルー。

 肌は雪のように白く、

 シミ一つない、きめ細かな美肌。

 まるで美少女の条件を、

 すべて集めて作られたかのような存在。

 それが――エルフィナだった。


「エルフィナお姉様は、オークそっくりと、

 皆んなから毛嫌いされているんだから、

 少しは自覚してよね!」

「ごめんね……メアリー……」

 エルフィナは困ったように笑う。

「こんな私が姉で……恥ずかしいわよね?」

「…………別に……そこまでは言ってないわよ……」

「ううん、分かっているわよ?私が醜く魔法も使えない、

 生まれてこない方が良かった()だって事は……」

 それでも、エルフィナは笑う。

「でも仕方ないじゃない?

 生まれてきてしまったんだもの……

 私にはどうにも出来ない事だし、

 せめて嘘でも明るくしていないと、

 生きて行く力が湧かないの……」

 少し遠くを見る。

「不思議よね?メアリーも、お父様、お母様も、

 とっても綺麗なのにね……

 幼い頃、お母様に聞いた事があるのよ……

 〝私の本当の両親は誰?〟ってね。

 そしたらなんて、おっしゃったと思う?」

「「貴方は私の生んだ子よ!

 そうでなかったらどれ程良かったか!」」

 二人で同時に口にした。

「そうそう」

 エルフィナは笑った。

「お母様は、そう仰ったのよ。よく分かったわね?」

「もう何度も聞いたわよ!」

「……そうだった?」

 エルフィナは小さく笑う。

「ふふふ……」

 しかし、その目には――

 うっすらと涙が浮かんでいた。

 それを妹に見られないように、

 そっと背を向け、校舎へと歩き出した。


 ――この時の私は、まだ知らなかった。

 自分の中に眠る力のことも。

 そしていつか、

 この世界の神々すら

 ひれ伏す存在になることを。

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

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