第9話 うつくしきは神の空威張り
ついさっきまで騒がしかった部屋には、静けさが宿っている。
「ふぅ……」
この時期は、窓から入ってくる涼しい風が本当に心地よい。
私のすぐ隣で寝ている可愛い男の子も、きっと良い夢を見ているに違いない。
「……にしても危なかった。私の暴走癖も早く治さなければいけないな」
風呂場での背中流しもそうだが、一歩間違えれば一線を超えてしまうところだった。
そこを守ることができたのは、優希の理性のおかげだと思う。
優希に言った「無理強いはしない主義」という言葉。
彼には「嘘」だと否定されてしまったが、あれは嘘偽りのないものだ。
それゆえに私は、色々と攻撃をしてみたのだが……。
「思い返してみると、恥ずかしいな……」
そもそも、今日のお昼頃、優希と目を合わせることができただけで、心臓がバックバクだったのだ。
それなのに、家にまで連れ込み、共に風呂へ入り、布団で絡み合……ってはいないか。
ともかく!
溢れ出すアドレナリンで誤魔化せているだけ。
あと、優希が私以上に恥ずかしかってくれているのも、大きなポイントだ。
あれだ。お化け屋敷で、自分よりも怖がっている人を見ると、かえって冷静になるやつ。
だからもし、優希から来てくれるようなことがあれば、私はそれに耐えられるのか――。
「むむっ?」
不意に本殿の外から何者かの気配を感じた。
夜間は結界を強化しているので、一般人が侵入してくる、なんてことはありえない。
侵入はおろか、近づくことさえできないはずだ。
つまり、この気配の正体は、私に匹敵する能力を持つ者。
あるいは――。
「もし神木 優希に手を出すようなことがあれば」
「その時は、私が相手になってやろう……ネコガミ」
【第一章・完】
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