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スローライフを目指したい鈍感勇者のラブコメは、天《災》賢者の意のままに!!〜システィナ様の暴走ラブコメ劇場〜  作者: ざつ


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第8話 山賊との交渉とレオンの試練 -1

 宿屋での騒動から一夜明け、一行は街道を歩いていた。


 カイは、隣を歩くルナとセレナの間に漂う、妙な空気を不思議に思っていた。二人はほとんど無言で、互いに視線を合わせようとしない。


「なぁ、ルナ、セレナ。二人とも、なんか元気ない?」


 カイが無邪気にそう問いかけるが、ルナは「別に」とだけぶっきらぼうに返し、セレナは俯いて黙ってしまった。特にセレナは、カイと目が合うと、まるで居心地が悪そうにそっと視線を逸らした。


「なんか、俺、変なこと言ったかな……」


 カイは首を傾げ、困惑した表情でレオンに話しかける。


「あの、レオンさん、この先には何があるんですか?」


「ああ、この道をまっすぐ進めば、大きな街がある。そこで、資金を補充するためのギルドのクエストを受ける予定だ」


 レオンはそう言いながら、どこか落ち着かない様子で周囲を警戒していた。その視線は、なぜかシスティナの背中に向かっていた。システィナはそんなレオンの様子を面白がるように、くすくすと笑っている。


「ふふん、レオン。そんなに警戒しなくても、何も起きないわよ。今日はただの道中よ」


「いや、どうも君が近くにいると、ろくなことが起きないからな……」


 レオンがぶっきらぼうにそう返すと、システィナはさらに笑みを深めた。


「あら、それは私のことが好きってことかしら?はっは〜ん、最高に面白いラブコメのフラグね」


 二人のやり取りに、カイは首を傾げる。ルナとセレナは、二人の関係性に慣れてきたのか、呆れたような、でもどこか微笑ましいような表情で見守っていた。









 その時、街道の先に複数の影が現れた。


 五人の男たち。彼らは全員が身の丈ほどの棍棒や錆びついた剣を手にし、黒い布で顔を覆っていた。その顔の隙間から覗く目は血走っており、一目でまともな人間ではないとわかる。


「お前たち!旅の者は金を置いていけ!」


 彼らのリーダー格らしき男が、威圧的な声で叫ぶ。その声は、何日も酒を飲んだような、枯れた声だった。


「山賊……!」


 ルナとセレナは身構え、セレナは思わずカイの背中に隠れた。ルナはカイを庇うように一歩前に出る。カイは、自分よりも小さいルナが前に出るのを見て、慌てて彼女を後ろに押しやった。


「ルナ、危ないって!俺が前に出るから!」


 カイはそう言いながら、身震いする。彼の心臓は激しく鼓動していた。目の前の山賊たちは、ダンジョンで出会った魔物よりもずっと恐ろしい。なぜなら、彼らは同じ「人間」だからだ。


 一方、セレナは震える声で呟いた。


「どうしましょう……。戦闘になれば、私たちは……」


 その言葉に、ルナは冷静に返す。


「大丈夫よ。私たちがいれば、勇者様は傷一つ負わせないわ」


 二人は互いに視線を合わせ、頷き合った。その表情には、恐怖よりも、カイを守りたいという強い意志が宿っていた。


 そんな二人の様子を、システィナは面白そうに眺めていた。


「やれやれ、退屈な道中だと思っていたが、意外と早く退屈を凌ぐイベントが起きたわね」


 システィナが面白そうに呟くと、レオンは眉をひそめる。


「システィナ、余計なことはするな!ここは私が引き受けよう!」


 レオンはそう言うと、剣に手をかけ、一歩前に出る。彼は騎士としての冷静な判断力で、山賊たちを制圧しようとした。


 だが、その瞬間、システィナはニヤリと笑うと、レオンの背中にそっと手をかざした。


「はっは〜ん、レオンの底力を出させるわよ」


 システィナがそう囁くと、レオンの目の前に幻覚が現れた。


 それは、無数の「尻」だった。


「う、うおおおお……!ま、またこの幻覚か……!」


 レオンは絶叫する。彼の視界は、システィナの幻覚魔法によって、あらゆる角度から見た、魅惑的な「尻」で埋め尽くされていた。


「な、なんなんだ、あれは……?」


 ルナは、レオンが一人で絶叫しながら剣を振るう様子を見て、呆然と呟いた。セレナもまた、目を丸くして、信じられないという表情でレオンを見つめている。


「レオンさん、一体どうしたのでしょう…?変なものでも食べたのでしょうか…?」


 カイは、そんな二人の様子を見て、慌てて尋ねる。ルナとセレナは、騎士の鑑であるレオンの変貌ぶりに言葉を失っていた。山賊たちも、突然奇妙な行動を始めたレオンに、戸惑いを隠せない。


「こんな誘惑に……負けるわけには……いかない!」


 レオンは叫び、尻への欲望を高らかに叫びながら、その勢いを剣に乗せて幻影を打ち砕いた。


「うぉおおおおおおお!私は……『尻』への欲望に負けはしない!うおおおおお!」


 彼の雄叫びは、山賊たちの耳にも届き、彼らは顔をひきつらせた。


「な、なんだあいつ……?怖ぇぞ……」


「し、……だと……?」


 山賊たちは恐怖と困惑で、一歩、また一歩と後ずさる。


 レオンは、幻影を打ち砕いた勢いのまま、山賊たちに襲い掛かる。彼の剣技は、幻覚に惑わされていたとは思えないほど冴えわたっていた。山賊たちはあっという間に制圧され、地面にひれ伏した。


「ふん……。退屈な舞台は、さっさと幕を引かないとな」


 レオンはそう言って、剣についた泥を払い、冷や汗を流しながらシスティナを睨みつける。システィナは「はっは〜ん」と笑みを浮かべ、レオンにウィンクをしてみせた。


「レオン、お疲れ様。あなたの活躍、本当に格好良かったわ」


「そ、そんなことより、聖女殿が怒って……」


 レオンが焦ったように言うと、システィナは再び笑みを深めた。


「あら、ご心配なく。あれもまた、恋という名の成長痛。それに、あの二人を競わせることで、勇者様への想いがより一層強くなるわ」


「そんな……!恋愛を弄ぶなんて、最低だ!」


 レオンは心底呆れたように言ったが、システィナは全く動じない。


「あら、そんなことないわ。私の故郷じゃ、こうやって男女をくっつけることを『愛のキューピッド』って呼ぶのよ」


 システィナはそう言って、ウインクをしてみせる。レオンは何も言い返せず、ただただ深い溜息をついた。


「それにしても、あなたの寝言は、本当に……」


 システィナがそう言って笑うと、レオンは顔を赤らめる。


「な、何の話だ!私は何も聞いていない!」


「あら、本当に?でも、あなたの顔は真っ赤よ?もしかして、あなたがわたしの夢でも見たのかしら? 寝言に出すくらいの熱い愛の夢かしら!?」


 システィナはレオンの顔を覗き込み、さらにからかう。


「ち、違う!そんなことあるわけないだろう!」


 レオンはそう叫ぶが、彼の心臓は激しく鼓動していた。


 結局、カイも巻き込んで朝から騒動になったことを思い出し、レオンは深い溜息をつくのだった。



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