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スローライフを目指したい鈍感勇者のラブコメは、天《災》賢者の意のままに!!〜システィナ様の暴走ラブコメ劇場〜  作者: ざつ


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第7話 聖女の大胆な試みと朝のドタバタ -2

 翌朝。


 朝の光が窓から差し込み、静けさが宿屋を包み込んでいた。


 セレナは前夜、システィナから受けたアドバイスを実行しようと、胸を高鳴らせながらカイたちの部屋へ向かう。


「はぁ……はぁ……」


 扉の前で立ち止まり、深呼吸を繰り返す。


 心臓の音がうるさくて、まるで太鼓を叩いているかのようだった。


 扉の向こうには、カイとレオンが眠っている。その事実に、セレナの緊張はさらに高まる。


(どうしよう……レオンさんもいるのに……)


 しかし、一度決めたことを諦めるわけにはいかない。セレナは意を決して、扉を静かに開ける。部屋の中は暗く、窓から差し込む光が、ベッドで眠るカイとレオンの横顔をぼんやりと照らしている。


 セレナはそっと部屋の中へ入っていくと、足音を立てないようにゆっくりとカイのベッドに近づいた。


 赤くなった顔をゆっくりとカイに近づける。


 その時、カイが寝言を言った。セレナにしか聞こえないほどの小さな声だった。


「んー、ルナ……そこ、くすぐったいってば……」


 セレナは固まった。カイの寝顔には、まるでルナと戯れているかのような、無邪気な笑みが浮かんでいる。空中で手を動かし、まるでルナの頭を撫でているかのようだった。


 セレナは、カイが夢の中でルナと戯れている様子にショックを受け、言いようのない嫌悪感が彼女を襲う。


「カイさん……不潔です!」


 怒りと失望が入り混じった声で、セレナは叫んだ。そのまま彼女は部屋を飛び出していく。


「ん……?今、セレナの声が……?」


 セレナの叫び声に、カイは目を覚ます。同時に、朝食の準備ができたとルナが、何事かとレオンが部屋に駆け込んでくる。ルナは部屋の前に怒った顔で立ち尽くすセレナを目撃し、レオンは目を覚ましたばかりのカイに顔を近づけ、小声で尋ねる。


 騒動の収束とルナの嫉妬

 セレナが叫びながら部屋を飛び出していった後、カイは目を丸くして立ち尽くしていた。レオンは溜息をつき、ベッドから降りてカイの肩を叩く。


「おい、一体何があった?聖女殿が怒って飛び出していったぞ」


「いや、俺にも全然わからないんだって!寝てたらいきなり『不潔です!』って言われて…」


 カイが困惑した表情で首を傾げていると、ルナが部屋の入口で硬直しているのが目に入った。セレナが怒って飛び出すのを見て、彼女もただならぬ事態だと感じていた。ルナは恐る恐るカイに近づくと、その耳をぴくぴくと震わせる。


「……何よ、あの寝言は」


 ルナの言葉に、カイはさらに困惑した。


「寝言?俺、何か変な寝言でも言ってた?」


「『んー、ルナ……そこ、くすぐったいってば……』って……一体、誰と何をしていたのよ!?」


 ルナは顔を真っ赤にして叫んだ。彼女の言葉を聞いたレオンは、思わずニヤリと笑みを浮かべる。カイの寝言が、まさかルナとセレナの三角関係に火をつけることになるとは、彼も予想していなかった。


「あ、ああ、それ……」


 カイは慌てて弁解しようとする。


「それは、俺の故郷の漫画で、妹の頭を撫でるシーンの真似なんだ。俺には姉貴しかいなかったから、いつか妹ができたら、こうやって頭を撫でてあげたいなって思って……」


「……え?」


 ルナは目を丸くして固まった。てっきり、自分との親密な関係を想像して寝言を言っていたのだと思っていたのに、まさかそんな微笑ましい理由だったとは。


「なんだ、そういうことか」


 レオンも納得したように頷く。


「もう……!馬鹿!勘違いさせないでよ……!」


 ルナは再び顔を真っ赤にすると、涙目になりながらカイの胸を力なく叩いた。


「ご、ごめん……」


 カイはオロオロしながらルナの頭を撫でてやる。ルナはされるがままにその温かい手に触れ、胸が締め付けられるような感覚に陥った。


 カイの寝言がルナに向けられたものであることを知った彼女は、セレナに対する優越感と、カイを独り占めしたいという独占欲を同時に感じていた。


「……ねえ、カイ」


 ルナは小さく呟いた。


「ん?どうした?」


「あんたの隣は……私の特等席だから」


 ルナはそう言って、カイの肩にそっと頭を乗せる。その様子を、部屋の隅から見ていたシスティナは、満足げに微笑む。


「ふふふ……おやおや。ついに、ルナちゃんの本性が出たようね」


 システィナはそう呟くと、部屋を出ていった。


 騎士と賢者の朝

「おい、システィナ!また何かやっただろう!」


 レオンはカイの部屋を飛び出し、廊下で不敵な笑みを浮かべるシスティナに詰め寄った。


「あら、レオン。何を言っているのかしら?私はただ、あなたたちがゆっくり眠れるように、部屋に戻っただけよ」


 システィナはとぼけた表情でそう言い放ち、レオンの隣を通り過ぎていく。


「くっ……!」


 レオンは歯ぎしりをするが、システィナの言動を証明する術はない。しかし、彼の勘は、この一連の騒動がシスティナの仕業であると告げていた。


「システィナ、聖女殿が泣いてるぞ!どうするつもりだ!」


「ふふん、大丈夫よ。あれもまた、恋という名の成長痛。それに、あの二人を競わせることで、勇者様への想いがより一層強くなるわ」


「そんな……!恋愛を弄ぶなんて、最低だ!」


 レオンはシスティナの言葉に、心底呆れたように言った。しかし、システィナは全く動じない。


「あら、そんなことないわ。私の故郷じゃ、こうやって男女をくっつけることを『愛のキューピッド』って呼ぶのよ」


 システィナはそう言って、ウインクをしてみせる。レオンは何も言い返せず、ただただ深い溜息をついた。


「それにしても、あなたの寝言は、本当に……」


 システィナがそう言って笑うと、レオンは顔を赤らめる。


「な、何の話だ!私は何も聞いていない!」


「あら、本当に?でも、あなたの顔は真っ赤よ?もしかして、あなたが寝言を言っている夢でも見たのかしら?」


 システィナはレオンの顔を覗き込み、さらにからかう。


「ち、違う!そんなことあるわけないだろう!」


 レオンはそう叫ぶが、彼の心臓は激しく鼓動していた。システィナはそんな彼の様子を楽しみながら、朝食の準備へと向かった。


 結局、カイも巻き込んで朝から騒動になったことに、レオンは深い溜息をつくのだった。



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