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スローライフを目指したい鈍感勇者のラブコメは、天《災》賢者の意のままに!!〜システィナ様の暴走ラブコメ劇場〜  作者: ざつ


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第6話 聖女の大胆な試みと朝のドタバタ -1

 宿屋での宴会が終わり、レオンが満足そうな表情でカイに話しかける。


「勇者殿、今日は本当に楽しかった。だが、明日は早い。私はもう部屋へ戻るぞ」


「ああ、レオンさん、今日はありがとうございました!おやすみなさい!」


 カイがにこやかに手を振ると、レオンは軽く会釈をして部屋へと戻っていった。


「さて、勇者様。私も部屋へ戻るわ。ルナちゃん、セレナちゃん、部屋に戻りましょう」


 システィナがそう言って二人の肩に手を置く。


「ん、そうだな。じゃあ、俺も部屋に戻るよ。みんな、おやすみ!」


 カイが自分の部屋へ戻っていくと、ルナ、セレナ、システィナも女性陣の部屋へと向かう。


 部屋に戻ると、ルナが大きな伸びをする。


「はぁ、ちょっと汗かいたから、共同浴場へ行ってくる。先に寝てていいからな」


 ルナはぶっきらぼうな口調でそう告げると、足早に部屋を出ていった。部屋にはセレナとシスティナだけが残される。


 昼間、カイに不意打ちで抱きついたことを思い出し、セレナの顔が赤くなる。ルナが「な、何をしているんだ!」と叫んだ声も、まだ耳に残っていた。


「システィナ姉様……私、さっきは一体何を……」


 セレナは顔を両手で覆い、ベッドに座り込む。その姿を見て、システィナは楽しそうに微笑んだ。


「あら、いいじゃない。それが恋というものよ。勇者様は鈍感だから、それくらい大胆にならないと、あなたの気持ちなんて伝わらないわ」


 システィナの声は、まるで甘い毒の囁きのようにセレナの心を揺さぶる。


「で、でも……。私、聖女として完璧でいなければならないのに……」


「いいのよ。完璧な聖女なんてつまらないわ。時には大胆になってみれば?今のあなたには、きっと新しい扉が開けるはずよ」


 セレナはシスティナの言葉に戸惑いながらも、身を乗り出した。


「も、もっと効果的な方法、ですか……?」


 システィナはセレナの熱心な瞳を見て、にんまりと笑みを深くした。


「そうね……例えば、朝の挨拶。ただ『おはようございます』と言うだけじゃつまらないでしょう?『カイさん、昨日の夜は、私の夢を見ましたか?』って、ちょっと小悪魔的に聞いてみるのはどうかしら?」


「ゆ、夢……ですか?」


 セレナの顔がほんのりと赤くなる。


「それだけじゃ物足りないわね。勇者様は、見た目以上に純粋だから、言葉だけじゃ響かないこともあるの。だから、もっと刺激的な、サプライズを仕掛けてみるのはどうかしら?」


 システィナはそう言って、さらにセレナに近づく。


「例えば、朝、彼が寝ている間に、こっそり彼の部屋に忍び込んで、彼の頬にキスをしてみる……なんてどうかしら?」


「き、キス……!」


 セレナの顔が真っ赤になり、目が大きく見開かれる。


「あ、でも、キスはハードルが高いわね。じゃあ、もっと簡単で、でも効果的な方法があるわ。彼のベッドのそばに、あなたのハンカチをそっと置いておくとか……。それだけで、彼はあなたのことを一日中考えてしまうわよ」


 セレナはシスティナの言葉に耳を傾けながら、その想像をするだけで胸がドキドキした。システィナはそんなセレナの反応を楽しみながら、さらに過激なアドバイスを続ける。


「でも、それではルナちゃんに差をつけられないわね。セレナちゃん、あなたは聖女でしょう?あなたの下着を、彼の部屋にそっと置いてくるというのはどうかしら?」


「下、下着……!」


 セレナは顔を両手で覆い、体を震わせた。しかし、システィナの言葉は止まらない。


「そうよ、下着。それもただの下着じゃなくて、あなたのお気に入りの下着よ。それを彼に見つかったら、彼はあなたのことをただの聖女じゃなくて、一人の女性として意識するはずよ」


 システィナの悪魔的なアドバイスに、セレナは完全に混乱していた。しかし、システィナの言葉は、聖女としての重圧から彼女を解放してくれるように感じられた。セレナは深呼吸を一つすると、決意を固めたようにシスティナを見つめる。


「わかりました!私、勇気を出して、頑張ってみます!」


 その時、共同浴場から戻ってきたルナが部屋の扉を開ける。顔を真っ赤にして、闘志に燃えているかのようなセレナの姿を見て、ルナは不審に思った。


「セレナ……?一体、何があったんだ?」


 ルナの問いかけに、セレナは何も答えられず、ただ「なんでもありません!」と叫んでベッドに潜り込んだ。ルナは首を傾げながら、そんなセレナを不思議そうに見つめた。


 ◆◇◆◇◆


 夜も更け、宿屋の廊下は静まり返っていた。


 自室に戻ったセレナは、ベッドに横になってもなかなか眠りにつくことができない。システィナの言葉が、何度も何度も頭の中で繰り返される。


『夜中にこっそり彼の部屋に忍び込んで、寝ている彼にキスをしてみるとか……』


『あなたの下着を、彼の部屋にそっと置いてくるというのはどうかしら?』


「き、キス……。下着……」


 セレナは毛布を頭まで被り、自分の鼓動が聞こえるほどの心臓の音に耳を傾ける。聖女として、これまで経験したことのない感情が、彼女の胸を締め付ける。


『完璧な聖女なんてつまらないわ』


 システィナの言葉が、彼女の背中を優しく押しているように感じられた。


 もし、ここで一歩踏み出さなければ、この恋はルナに奪われてしまうかもしれない。そんな焦燥感に駆られ、セレナはベッドから飛び起きた。


 窓の外は満月が煌々と輝き、まるで彼女の背中を押してくれているようだった。




 セレナは音を立てないようにゆっくりと部屋の扉を開け、廊下へと足を踏み出す。


 廊下には誰もいない。


 目的のカイの部屋までは、ほんの数メートルだ。




 セレナは深呼吸を一つすると、決意を固めて一歩を踏み出した。



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