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スローライフを目指したい鈍感勇者のラブコメは、天《災》賢者の意のままに!!〜システィナ様の暴走ラブコメ劇場〜  作者: ざつ


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第29話 マフラーの呪いとルナの告白 -1

 ドラゴンの集落を出発した一行は、魔王城へと続く街道を進んでいた。




 日が暮れて、一行は街道沿いの森で野宿の準備を始めた。


「魔王城、もうすぐ見えるのかな…」


 フィリアは、星空を見上げながら、ポツリとつぶやく。


「そうね。この道をまっすぐ進めば、魔王城がある山脈が見えてくるはずよ」


 システィナは、焚き火に薪をくべながら答える。彼女の言葉に、ルナとセレナは、互いに視線を交わし、胸の奥で複雑な感情が渦巻いているのを感じていた。


「もう…そんなところまで来ちゃったのね…」


 ルナは、思わずため息をつく。カイとの旅が終わってしまうことに、彼女は言いようのない不安を感じていた。


「この旅が終わってしまったら、カイさんは…」


 セレナもまた、カイとの別れを想像し、顔を曇らせる。


 そんな二人の様子を、システィナは面白そうに観察していた。


「なるほど、なるほど…。『旅の終わりが近づくにつれて、高まるヒロインたちの焦燥感』…。これは、ラブコメにおいては王道中の王道展開ね」


 システィナは、一人で深く頷き、ニヤリと笑う。


 その時、ルナは首に巻いたマフラーが、チクチクと肌に触れるのを感じた。それは、システィナがカイに「不完全な魅了の魔法」をかけたマフラーだった。


「な、なんだか…変な感じ…」


 ルナは、自分の感情が、まるで増幅されているかのように感じていた。カイへの想いが、普段よりも強く、彼女の心を締め付けていく。


「もし…カイが、人間以外の女性を愛せないとしたら…」


 ルナは、自分の獣人の耳と尻尾に触れ、不安な気持ちに襲われる。


「…ふふん。ルナ、あなたの耳と尻尾、なんだかソワソワしているわね」


 システィナは、ルナの心の不安を見透かすように、意地悪く囁く。


「な、なによ…!」


 ルナは、顔を真っ赤にしてシスティナを睨みつける。


「あなたとカイは、所詮、種族が違うもの。あなたは、カイにとって、いつまで経っても『親友』でしかないのかもしれないわよ?」


 システィナの言葉は、ルナの心の最も弱い部分を突き刺した。ルナは、悔しさと悲しさで、獣人の耳を情けなく垂らし、尻尾も力なく揺れていた。


 そんな二人の様子を、セレナもまた、複雑な表情で見つめていた。セレナもまた、ルナと同じように、カイとの種族の違いに不安を抱えていたのだ。


「…お姉さま…!そんな、ルナさんをいじめるようなことは…!」


 フィリアは、システィナの言葉に、悲しそうに顔を曇らせる。


「大丈夫よ、フィリア。これは、ルナを成長させるための試練なのよ」


 システィナは、そう言って、優しくフィリアの頭を撫でる。しかし、彼女の口元は、ニヤリと歪んでいた。


 その夜、誰もが寝静まった頃、ルナは一人、焚き火のそばに座っていた。彼女の耳と尻尾は、未だソワソワと落ち着かない。


「…あんたのせいで、おかしくなっちゃう…」


 ルナは、そう言って、小さく震える声でつぶやく。その時、彼女の背後から、優しく声をかける者がいた。


「ルナ、どうしたんだ?眠れないのか?」


 カイだった。彼は、ルナの隣に座ると、彼女の顔を心配そうに覗き込む。


 ルナは、彼の顔を見て、感情が抑えきれなくなり、涙が溢れてきた。


「な、なんで…!なんであんたは、そんなに優しくするのよ!」


 ルナは、そう言って、カイの胸に顔をうずめる。


「ルナ…?」


 カイは、突然のルナの行動に戸惑いながらも、優しく彼女の頭を撫でた。


「…あんたのことが、嫌いじゃない…」


 ルナは、絞り出すような声で、そうつぶやく。


「え、どうしたんだよ、ルナ!俺もルナのことは嫌いじゃないよ!大切な仲間じゃないか!」


 カイは、彼女の真意に気づくことなく、満面の笑みで答える。


 ルナは、彼の鈍感な言葉に、悲しさと嬉しさが入り混じった、複雑な感情を抱くのだった。



 ルナは、カイのあまりにも鈍感な反応に、悲しさと恥ずかしさで顔を真っ赤にした。


「…あんたなんか…!もう知らないっ!」


 ルナは、そう叫ぶと、自分の首に巻いていたマフラーを勢いよくほどいた。それは、システィナが「不完全な魅了の魔法」をかけた、カイの故郷に似たチェック柄のマフラーだった。


「…こんなもの…もういらない!」


 ルナは、マフラーをカイの胸元に押し付けると、そのまま焚き火のそばから駆け出した。彼女の耳と尻尾は、感情の昂ぶりで、普段よりも激しく揺れ動いている。


 カイは、突然マフラーを押し付けられ、走り去ったルナの背中を、ただただ困惑した表情で見つめるしかなかった。


「…どうしたんだ、ルナ…?」


 そんなカイの背中を、セレナが物陰から見つめていた。彼女もまた、ルナがカイに「告白」する様子を、一部始終見ていたのだ。


「…ルナさん…」


 セレナは、ルナの行動に驚きつつも、その胸の内には、彼女と同じ焦燥感が渦巻いているのを感じていた。魔王城が近づくにつれ、カイとの旅が終わってしまうという不安が、彼女の心を締め付けていた。


 その時、彼女は、カイが手に持っているマフラーから、うっすらと魔力が漏れ出しているのを感じた。


「まさか…!あのマフラーは…!」


 セレナは、システィナの悪巧みに気づき、ゾッとした。ルナの感情が、あのマフラーのせいで増幅されているのだと直感したのだ。


 その様子を、物陰で見ていたシスティナは、顔から笑みが消えていた。


「…こりゃ、ちょっとやりすぎたわ…」




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