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スローライフを目指したい鈍感勇者のラブコメは、天《災》賢者の意のままに!!〜システィナ様の暴走ラブコメ劇場〜  作者: ざつ


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第25話 ルナとセレナの奮闘、そして空飛ぶ料理人 -1

 森の番人討伐を終えた翌朝、一行は再び旅路へ出発した。清浄な空気に満たされた森の中、ルナとセレナは、フィリアの無邪気な笑顔を横目に、こっそりと後方へ移動した。


「ルナさん…」


「…セレナ…」


 二人は、顔を見合わせ、真剣な表情で頷き合う。


「…あの子、油断なりませんわ」


 セレナは、フィリアを指差しながら、声を潜めて言った。


「そうよ!昨日も今日も、ずっとカイの隣を陣取って、あんなに楽しそうに…!」


 ルナは、獣人の耳をぴくぴくと動かし、不満そうに答える。


「はい…!このままでは、カイさんとの二人きりの時間など、夢のまた夢ですわ!」


 セレナの言葉に、ルナは大きく頷く。森での一件で、二人の間には、友情にも似た奇妙な共闘関係が芽生えていた。


「…ねぇ、セレナ。私たち、協力しない?」


 ルナが意を決して提案する。


「協力…ですか?」


「うん。このままだと、システィナの悪趣味な策略に踊らされて、フィリアに全部持って行かれちゃう!」


「…賛成ですわ!お姉さまを出し抜くには、私たち二人で協力するしかありませんわ!」


 かくして、ルナとセレナの「打倒システィナ作戦」が始まった。


「作戦はこうよ。まず、私がシスティナの注意を引くわ。ラブコメオタクのシスティナは、私の言葉に食いつくはず。その間に、セレナがレオンを動かして、システィナを足止めするの。そうすれば…」


「はい…!その隙に、カイさんを誘って、二人きりになれますわ!」


 二人は、悪だくみをするように顔を見合わせ、小さく笑った。


 ルナは、システィナとレオンが二人で話しているのを見計らい、彼女に話しかけた。


「ねぇ、システィナ。ちょっと相談に乗ってくれない?」


「はっは〜ん、おやおや…。私に相談?いいわ、聞きましょう」


 システィナは、ニヤニヤしながらルナに近づく。


 その隙に、セレナは素早くレオンに近づき、耳元でそっと囁いた。


「レオンさん…!大変ですわ!お姉さまが、カイさんに危険な魔法をかけようとしています!」


「な、なんだと!?勇者殿に危害を加えるつもりか!?」


 レオンは、勇者であるカイを守るという使命感から、セレナの言葉にまんまと騙され、慌ててシスティナを問い詰めようと駆け出した。


「システィナ!一体、何をするつもりだ!」


 レオンの剣幕に、システィナは笑いをこらえきれないといった表情で、口元を隠した。


「はっは~ん、おやおや…。あなたたち、私がそんな単純な魔法を使うとでも思ったのかしら?」


 システィナは、レオンに近づくと、彼の目を魔法で一瞬だけ「お尻」の幻覚で埋め尽くした。


「うぉおお!幻覚だ!システィナ、何てことを…!」


 レオンは、叫びながら目を押さえる。その様子に、ルナとセレナは顔を見合わせ、大成功だとばかりに微笑み合った。しかし、次の瞬間、二人は絶句した。


「ふふん、残念だったわね。あなたたちの作戦、すべてお見通しよ」


 システィナは、そう言いながら、空間転移魔法で、ルナとセレナ、そしてカイを、目の前にあった巨大な岩陰に移動させた。


「な、なんで…!?」


「どうして…!?」


 二人が混乱している間に、システィナはレオンに、さらに幻覚魔法をかけている。


「さあ、レオン。幻覚から覚めるには、私の『お尻』を撫でるしかないわね。さあ、遠慮なく…」


「うぉおおお!システィナ、やめろ!」


 レオンの悲鳴が、岩陰に隠れている三人に聞こえてくる。


「お姉さま、ひどいよ…!」


 フィリアは、システィナの悪趣味な行動に、顔を曇らせた。


 システィナは、そんなフィリアの言葉を無視し、満面の笑みでルナとセレナに語りかける。


「はっは〜ん、おやおや…。あなたたち、まだまだ私の敵じゃないわね。そんな単純な作戦で、この私を出し抜けるとでも思ったのかしら?」


 システィナは、そう言って高らかに笑う。ルナとセレナは、自分たちの未熟さを痛感し、悔しさに顔を歪める。


「あなたたちには、まだまだ負けないわね。もっと面白いドタバタを期待しているわよ…!」


 システィナの言葉に、ルナとセレナは、改めて彼女がどれだけ手強い相手であるかを知った。カイを巡る争奪戦は、システィナの悪趣味な策略によって、振り出しに戻るのだった。









 森を抜け、一行が広大な平原に差し掛かったときだった。


 空に、巨大な影が舞っているのが見えた。


「あれは…まさか…ドラゴン!?」


 レオンが、驚きに目を見開く。カイたちも空を見上げると、そこには、真っ赤な鱗に覆われた巨大なドラゴンが、優雅に旋回していた。しかし、そのドラゴンの姿は、どこか威厳に欠けていた。


「…なんか、お腹が空いてるみたいだね…」


 カイが、呑気につぶやく。ドラゴンの咆哮は、怒りではなく、空腹を訴えているように聞こえたのだ。


 その予想通り、ドラゴンは彼らの目の前に着陸すると、大きな瞳でカイを見つめ、人間には理解できない言語で話しかけてきた。


「勇者殿、このドラゴンの言葉が分かるのか?」


 レオンが問いかけると、カイは首を傾げる。


「ううん。でも、なんとなく言ってることは分かるよ。『お前、いい匂いがするな…!そのリュックの中身、よこせ…!』って言ってるみたいだ」


 カイの言葉に、ルナとセレナ、そしてフィリアは、思わず身構える。


「くっ…!こんなところで、ドラゴンと戦うことになるとは…!」


 レオンが剣を構える。しかし、システィナは、ドラゴンの様子を面白そうに眺めていた。


「はっは〜ん。おやおや…。このドラゴン、ラブコメの『新たな障害』として現れたのかしら?それとも、勇者様の『新たなライバル』として…?」


 システィナは、ニヤニヤと笑う。


 その時、ドラゴンが、カイのリュックから漏れる料理の香りに、大きく鼻を鳴らした。


「…おい!人間!そのリュックの中身は、お前が作った料理か!?」


 ドラゴンの言葉に、カイは目を丸くした。


「え、どうして分かったの!?」


「ふん…!俺は、この世界で一番の料理人だ!その匂い…!ただものではないとみた!」


 ドラゴンは、そう言って、威厳に満ちた声でカイに告げた。


「勇者よ…!俺と料理対決しろ!もし、お前が俺より美味い料理を作れたら、この森の奥へ行く道を譲ってやろう!」


 ドラゴンの予想外の言葉に、一行は呆然とする。しかし、カイは、その言葉に目を輝かせた。


「面白そうじゃん!よし、やってやるよ!俺の故郷の料理、見せてやるぜ!」



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