第20話 森での出会いと三つ巴の始まり -2
「ありがとうございます…!やはり、あなたたちは特別な方なのですね…!」
フィリアは、ルナやセレナを見て、目を丸くした。ルナの獣人の耳と、セレナの清らかな聖なる力に、精霊魔法の使い手であるフィリアは、すぐに気づいたのだ。
「ふふん…あら、勇者様。そんなに簡単に引き受けてしまって、いいのかしら?」
システィナが、面白そうにカイをからかう。
「システィナ、何言ってるんだよ!困っている人がいたら、放っておけないだろ!」
カイは、システィナの言葉に反論する。
「そうよ、システィナ様!私たちは、フィリアさんを助けるべきですわ!」
セレナは、カイの言葉に同意し、フィリアに笑顔を向けた。
「…仕方ない。この森の精霊のためだ」
ルナは、ぶっきらぼうにそう言ったが、その瞳には、すでに決意が宿っていた。
そんな三人の様子を、システィナは満足そうに見つめていた。彼女は、妹の登場によって、カイを巡るラブコメ展開が、さらに複雑になることを予感していたのだ。
「…はっは〜ん、おやおや…。新しいヒロインの登場で、どうやらラブコメ展開が、さらに複雑になったようね…」
システィナは、自嘲気味に呟く。フィリアが加わったことで、自分自身もその恋愛劇の「当事者」になるかもしれないという予感に、彼女は戸惑いを隠せないでいた。
「お姉さま…?」
フィリアは、システィナの言葉に、不思議そうに首を傾げた。
「なんでもないわ。それより、行きましょうか」
システィナは、そう言って、一行を先導する。
フィリアの加入により、勇者パーティーは六人体制となり、一行は森の最深部へと足を踏み入れた。魔王の瘴気に侵された森は、さらに不気味な様相を呈している。枯れ木はまるで生きているかのように枝を伸ばし、地面からは黒い霧が立ち込めていた。
「カイさん!こちらですわ!」
セレナは、聖なる力で周囲の瘴気を浄化し、足元に可憐な花を咲かせながら、カイの隣に寄り添う。
「ふふん、カイさん、私の力があれば、どんな危険な道も安全に歩けますわ。これが、聖女としての…私にしかできないことですわ」
セレナは、フィリアに聞こえるように、少し自慢げにそう語った。
「なによ…!この道のりは私が拓いてみせる!」
ルナは、セレナの言葉に反発するように、赤い瞳を燃やしながら、道を塞ぐ巨大な岩に攻撃魔法を放った。火の玉が岩に激突し、爆音と共に岩は粉砕される。ルナは、ふん、と鼻を鳴らし、カイに視線を送る。
「…どう?私の方がずっと頼りになるでしょ?」
ルナは、ぶっきらぼうな口調でそう言ったが、その表情には、どこか期待の色が浮かんでいた。
そんな二人を、フィリアは不思議そうに眺めていた。しかし、すぐに彼女も負けじと行動を開始する。
「お兄さま、そんなに急がなくても大丈夫です!この辺りの精霊さんたちは、とても穏やかです!」
フィリアは、精霊魔法で森の動物たちを呼び寄せ、カイの周りに小動物たちを集める。リスやウサギたちが、カイの周りで楽しそうに跳ね回る。
「すごい!フィリアは、動物と話せるんだ!」
カイは、動物たちと戯れながら、目を輝かせた。
その様子を見たルナとセレナは、再び内心で嫉妬の炎を燃やす。
(なによ、あの小動物たち…!まるで、カイさんを独り占めしようとしているみたいじゃない…!)
ルナは、再び獣人の耳をぴくぴくと動かした。
(わ、私も動物と仲良しですわ…!でも、カイさんは、私のほうが…!)
セレナもまた、フィリアの無邪気なアピールに焦りを感じていた。
三人のヒロインが、それぞれのやり方でカイを巡る水面下の争いを激化させていく。カイは、相変わらずそのことに気づかないまま、呑気に進んでいく。
その様子を、システィナは少し離れた場所から見ていた。彼女は、楽しそうに笑うカイと、彼に群がる三人の姿に、これまでのような余裕の笑みを浮かべられずにいた。
(…はっは〜ん。なんだか、この状況、面白くないわね…。私の妹が、あんな風に…)
システィナは、自身の胸に湧き上がる複雑な感情に、戸惑いを隠せなかった。
物語は、三つ巴の戦い、新たなステージに進んでいた。
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