97 魔力植物調査 二日目夜② 【side マヤゴン魔術騎士団長】
オレは、まずアーノルド殿下の体内から毒を抜くための準備として、一度、衣服を着替えに騎士団長用の天幕に向かう。
(時間が惜しい……)
そう思ったオレは、天幕に入ると衣服を全て脱ぎ、水魔法で身体を洗いながし、清めた後、温風魔法を使って全て一瞬で身体を綺麗に整える。これ以上、アーノルド殿下の傷口に菌などが混入しないように外部からの埃をできるだけ持ち込まないようにした。
討伐に行くときも、いつもこの手順で身体の汚れを落としているので、オレにとっては慣れた手順だった。
それから、新しい衣類を身に着けてから急ぎアーノルド殿下の天幕に戻る。
「失礼します」
殿下が返事ができないことはわかっているが、一声かけてから入室した。
「念の為に、滅菌もしておくか。高圧蒸気滅菌」
オレは、室内と自分の衣類などに滅菌魔法をかけておく。大げさかもしれないが、少しでも清潔にしておくべきだろう。
オレは医師ではない。魔術が専門なので何となくやっておいたほうがいいかという知識だけで魔法をかけておいた。
「アーノルド殿下。今から額に入りこんだ毒を排出する魔術を使います。私の魔力が体内に入り込むので、しんどくなるかもしれませんがどうぞ耐えて下さい」
そう一声かけると、オレはベットに横たわっているアーノルド殿下の頭を持ち上げ、自分の膝ひざの上に殿下の頭をのせる。この方が集中して魔力操作がやりやすいからだ。
オレの目には、苦痛で顔を歪めているアーノルド殿下とうっすらと同じく苦しそうな顔をしているリアナの姿が見えている。
「? ちょっとリアナの姿が薄くなっている気がするが……気のせいだろうか……」
アーノルド殿下とリアナの魂に異変が起きているのかもしれない。
「じゃあ、始めますね」
オレは、ゆっくりと毒されて紫色になっている傷口の上に手を翳す。ゆっくりゆっくり目をつぶりながら、アーノルド殿下の体内に入り込んだ毒を魔力で探してみる。他人の身体に魔力操作を行う繊細な作業なので、とても時間がかかる。
どれくらい時間が経っただろうか。
「見つけた。ここまで侵入しているのか……」
アーノルド殿下の身体全体に毒が回っている。血の中を巡っていったのだろう。ゆっくりと毒だけを傷口から排出できるか試みてみる。こんな魔術は今までに試したことがない。頭の中のイメージで考えてみたことはあったが、実際にやってみるのは初めてだった。
オレは夜通し、毒を排出する魔術を使い続け、全部抜けきったと思った頃にはクタクタになっていた。
「ひとまず、これで毒は抜けたはずだからライガーンに診てもらってから傷口を塞いでもらおう」
オレは、少しばかり表情がマシになった殿下とリアナの顔を見て、一安心する。
「……それにしても、酷い熱だな。かなり高いじゃないか……」
疲れた頭を動かして、どう熱を冷まそうか思案する。
「まぁ、これが手っ取り早いか」
オレは、自分の衣類の前を開き、毒を抜いた殿下の横に一緒に横たわった。
俺自身の身体を保冷剤のように冷やす魔法を施してから、殿下の身体を抱きしめる。傍からみたら、恥ずかしい光景かもしれないが、今は誰も入室してくることはないし、オレ自身も疲れ切っていたので、殿下とうっすら見えているリアナを抱きしめたまま、ライガーンが到着するまで、少し仮眠をとることにした。
これでライガーンが到着するまでに少しは熱が下がるといいのだが……。
オレが目を閉じる瞬間。
アーノルド殿下とリアナがひんやりとして気持ちがいいのか、顔が穏やかなになり頬を摺り寄せてくる姿を見て、可愛いなと思いながら保冷剤として二人を抱きしめ続け、しばしの眠りについた。
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