96 魔力植物調査 二日目夜① 【side マヤゴン魔術騎士団】
「アーノルド殿下のご容態はどうなんだ?」
オレは表情の暗い救護班の2人に問いただす。
「それが……骨折箇所は無事に我々の回復魔法で治癒することができたのですが、現在、発熱しておりまして……」
いつまで経っても歯切れの悪い言い方しかしない二人にオレはどんな問題が起こっているのか、早く説明するように目で催促をする。
「魔力の使い過ぎももちろんですが、一番の問題は、額の傷です。あれを塞ぐ治療はまだできません……」
「それはなぜなんだ?」
なぜ治療ができないのか理解できなくて、説明を補足するようにオレは二人を促す。
「切り傷、擦り傷自体は回復魔法で治療は可能なんです、マヤゴン魔術騎士団長。でも、今は傷口を塞がない方がいいのです」
「なぜなら、アーノルド殿下の浸かっておられた水には毒が混ざっていたからです」
「毒だと?」
オレは毒の混入までは考えが至っていなかった。単なる昔使われていた井戸の汚れた水くらいだから、綺麗に洗い流せば問題ないだろうと考えていた。
(くそっ、オレの考えが甘かったか……)
「では、いったい何の毒なのか判明しているのか?」
二人はお互い顔を見合わせてから、首を横に振る。
「残念ながら、もともとあった使われなくなった井戸に恐らく蓋か何かはしてあったのでしょうが、きっと経年劣化とともに隙間から自然界に普通に存在している異物が混入して、それが水と混ざり合ってできた自然由来の毒だと思われます。それが、何年かはわかりかねますが水に溶けだしたり、濃縮されたりと井戸の中で変化があったのでしょう。水を飲み込んでしまっているシブロン殿下が口に含んでも死には至っていないので、服用しても致死量には至らないくらいの毒なのでしょうが、傷口には良くなかったようで傷口から侵入した毒が体内に取り込まれたようで、感染症を患っておられます。熱はその影響で出てきているのだと思われます」
「毒の特定には時間がかかるということか?」
「はい。自然由来の物ですので、どの解毒剤を使用するべきかまだわかりかねます」
オレは天幕の外で、頭を抱えた。殿下お二人とも助けられたと思ったけれど、まだ安心はできないようだ。
目を閉じてしばらく何か方法がないか考えてみる。
「傷口に入りこんだ毒を体外に排出できれば……お命が危険に晒される可能性は下がるのだろうか」
オレはある方法を思いつき、それをやってみるべきか思案してみる。
「そうでございますね。 毒が排出されれば、好転するやもしれません。断言はできかねますが……」
まぁ、何もやらないよりかは何かできることがあるならば、やってみるしかない。
「わかった。ご苦労。第一区域にいるライガーン殿には、急ぎこちらに来るようには指示を出してはいる。彼が到着するまで、オレが魔術で毒の排出を試みてみよう。悪いが集中しないとできないから、この天幕には誰も人が立ち入らないようにしてくれ。ライガーン殿が到着したら彼だけここに通すように頼む」
オレは、治療にあたった救護班の二人と、魔術騎士団員の天幕を護衛している者に同じ内容を伝えた。
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