94 魔力植物調査 二日目⑦ 【side マヤゴン魔術騎士団長】
「おい、一体どうなっているんだ!」
魔術騎士団長のオレは、第四区域にいる騎士団員全員に撤退の指示を出す。
しかし、撤退どころか負傷者だけが増えていく。
何かがおかしい。
大型の魔物が1体だけでなく同時に6体も襲撃してきたからだ。彼らの縄張りがここのはずはない。なぜ、こんなにも後から後から沸いてくるのか、オレは後退を指示しながら疑問に思う。
今回は魔力植物を調査するために組まれた騎士団だから、討伐するような編成で組まれたわけではない。大型魔物と遭遇してもせいぜい1,2体と想定しての人数でしか組まれていないのだ。
そこへ、第五騎士団長のスックソンも駆けつけて撤退の援護を手伝ってくれる。
「おい、第四皇子殿下と第三皇子殿下にはきちんと騎士団員がついているんだろうな」
「あぁ、最小限だが残してきている。この大型魔物が殿下のところに向かわないように、気を付けろ」
「わかった」
オレはスックソン騎士団長に返事をしつつも、何か違和感を覚えて、殿下たちの方が気になる。
スックソン騎士団長の援護もあって、負傷者とともに後退を始めたオレは奇妙な魔物たちの行動を目にする。
「あれは……なんだ? 木に体当たりをしているのはどういう意味だ?」
オレは、疑問を感じて大型の魔物の注意が森の木の何本かに集中していることに気が付く。
「何か木に括りつけられているのか?」
オレは訝しく思って、風魔法を発動させて上空に浮遊移動して魔物たち全体の行動を把握することにした。
あれは……まさか……。
背中を嫌な汗が伝っていく。第四区域を取り囲むように魔物が集まり、しかもその魔物は皆、目の色を変えて木に括り付けられているものに興奮をしている。
しまった! 魔物をおびき寄せるための、罠か! ……ということは、こちらは陽動で、狙いは……殿下たちだ!
オレは、焦りを感じてスックソン騎士団長には何も伝えずに、慌てて第三区域に空を飛んで移動する。きっと、スックソン騎士団長もさすがにおかしいことに気が付いているはずだ。オレが空から第三区域に移動する姿を見れば、こちらが陽動だったと彼なら察することができるだろう。
「シブロン殿下……アーノルド殿下……」
急げ急げ急げ。
オレは、最大出力で第三区域に向かう。
スックソン騎士団長が追加で指示を出してくれたのだろう。風魔法で空を飛んで移動できる団員がオレの後ろから何人か付いてきているのが見える。しかし、彼らはオレよりも早く移動はできない。最速なのはオレだからだ。
どこが遠くの空中で、何か爆ぜる音が聞こえた。
「……どこだ……」
オレは音を聞き逃さないように、下降しながら少しだけ速度を落として、注意深く様子を伺う。こんなことができるのは……リアナしかいない。
「頼む、リアナ。もう一度、さっきの空砲を打ってくれ」
オレは、空に浮かんだまま、ぐるりと辺りを見回すと、次は近くで何かにぶつかり木々が倒れていく音がする。木々が倒れていく様子から風魔法を噴射させた場所を特定する。
「あそこか!!!」
土がボロボロと崩れて、穴の中に落ちて崩落していくのを上空から確認する。
あの中にいるのか!
オレは、穴の上空に行き魔術を発動させる。リアナの鼓動を感じとり、彼女全体を魔法で覆いつくす。何か彼女は重たいものを抱えているようだ。
……シブロン殿下と一緒なのか?
オレは集中して彼女の周りに強固な防御層を作り、ゆっくりゆっくり持ち上げる。
どうやら、先ほどの崩落した土砂がかぶさっているようで随分と重たく感じる。
オレは両手を伸ばしながら、地上へ降り立ち井戸のような穴の近くに神経を集中させ、両腕をゆっくりと持ち上げていく。
すると、崩落した時の土の塊が、穴の中から、下から上に向かって押し出されて出てくるのに続き、オレが作り出した防御層の中に人が包まれた状態で持ち上がってくる。
……それは、シブロン殿下を大事そうに身体で守りながらうずくまるアーノルド殿下の姿をしたリアナと、その腕の中に抱えられながらぐったりとしているシブロン殿下だった。
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