92 魔力植物調査 二日目⑤
「これは!」
私は、アーノルド殿下になってから学んだ内容に、魔物がこの植物、生物、岩石を好むという物を図鑑で見た記憶がある。
暗闇でよくわからないけれど、シブロン殿下の襟下についている宝石は……それに似ている。
暗くて判断できないし、宝石類には疎いからわからないけれど……
「これ、はずしていい? 大事な物だったら申し訳ないけど」
「いえ、今朝、騎士の人にこれが届けられて、身に着けるように手紙が添えてあったとおっしゃっていたので、公務に必要な飾りなのかと思ってつけただけで、特に思い入れはありません」
「わかった。はずしたら、井戸の外に投げるからね?」
「わかりました、兄上」
聡くて、聞き分けの良い弟ね。外見はアーノルド殿下とは全く異なるけれど、心根は素直な子なのかもしれない。かじかむ手で急いでシブロン殿下の襟元から宝石を外すと右手の平にそれを乗せて、井戸の外めがけてその宝石が上空に上がるように風魔法を発射させる。
ズドンッ
上手に井戸の外に飛び出した宝石を見てから、もう一度、今度は強めの攻撃魔法でその宝石目がけて風魔法を打つ。
ドンーーーー
あら、威力を間違えたかしら。水温が冷たくて手がかじかむから調節を間違えたようだ。井戸の壁面に細心の注意を払って、細く引き絞った風魔法にしたから強すぎたのかもしれない。
でも、それを見て私は確信した。一発目に空中に飛び出した宝石にイノシシ型の魔物は標的を変えたのがわかったからだ。
「やっぱり、あれに引き寄せられて興奮状態だったんだ……」
私は、魔物が宝石を追って行ったのか、姿が見えなくなって安心する。
「兄上……あれは……」
「あの宝石には魔物が興奮状態になったり、魔物を引き寄せられる鉱石が使われていたみたいだ。ひとまず、これであの魔物はこの場を離れたようだから安心していいよ」
「ごめんなさい、兄上。ぼく……何も考えずに身に着けてしまっていました」
「いや、悪意ある誰かの仕業だったのか、本当に何も知らずに善意でそうとは知らずに持ってきたのか……それを議論するのは、二人で無事にここを出てからにしよう」
「はい、兄上」
間違いなく、前者だとは思うけれど、今、それを議論していても仕方がない。ひとまず、アーノルド殿下とシブロン殿下が無事にここから脱出してから考えればいいことだもの。今は……リアナとしてこの身体も、シブロン殿下も助けることを第一に考えるべきよね。
春めいてきたとはいえ、地中の井戸水は氷のように冷たい。
私自身の手が、かじかんで役に立たなくなるのも時間の問題だと思っている。早くここから抜け出さないと!
考えるのよ、リアナ!! こんなところでアーノルド殿下を野垂れ死にさせるわけにはいかないのよ!!
私は、しがみついているシブロン殿下に視線を巡らせながら、脱出方法を必死に考えていた。
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