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8 災難から逃げた先に①

 シャーリー聖女と私も辻馬車にまた乗って、医院に戻ろうと来た道を歩きだした。


 その時。


 先ほど私たちを追い抜かした騎士が乗っていた馬が嘶き、前足を高くあげる。

 何事かと思っている暇はなかった。なぜなら、山手側から地響きと共に岩が土砂と共にいくつか転がり落ちて来るのが視界に入ったからだ。


「聖女様!! 走って!!!」


 騎士の方たちも、慌ててこちらに戻ろうとしているのだろう。こちらに手を差し伸べようとする姿が一瞬、視界を横切る。しかし、危険を察知している馬を彼らはコントロールすることができず、馬は土砂から逃げようと逆方向へと遠ざかっていく姿が見えた。


「リアナ! 早く!!」


 走りだしたシャーリー聖女の後に私も続いて走り出すけれど、地面の揺れに足をとられて真っ直ぐ走ることができない。


(早く逃げないと!) 

 気持ちだけは逸るのに、足が思うように前に進んではくれない。


 少し先を走るシャーリー聖女の背中を確認し、迫り来る土砂を確認した瞬間、身体が弾き跳ばされた痛みを感じ、私は意識を失った。



 ■■■



「っぷはっっ」


 私は、意識を取り戻すと大きく息を吐き出した。


(あっぶなかったぁ!)


 私は、生きているのだと安堵する。あんな勢いよく土砂と岩に弾き飛ばされたのに、助かったようだ。

 目を開けると、白い天井が見える。

(あれ・・・。私、気を失ってしまったから、どこかに運びこまれたのね。長いこと眠っていたのかしら)


 つい先ほど土砂崩れに巻き込まれ、てっきり土砂の中に埋もれた状態で意識を取り戻したと思っていたのに、いつの間にか無事救出されていたようだ。

 数回、瞬きを繰り返してから、痛みがあるかもしれないとゆっくり首を左右に動かしてみる。

 ふむふむ。首は大丈夫そうね。痛みもなく動かすことができる。


 私は仰向け寝かされていたため、骨折しているかもしれなかもしれないと思い、右腕を動かして自分の右頬を触ってみる。

(右腕も動かせるわね。良かった。腕が動かせれば痛み止め程度でしかないけれど、自分で回復魔法をかけることができるわね)

 左腕もゆっくり顔の前に持ち上げて、手のひらを開いたり閉じたりしてみる。うん、()()()()私の手と指だわ。

(左腕も問題なさそう・・・)


 土砂と岩に体当たりされたのだから、命を落とすか骨折は免れないと思っていたけど、意外と軽傷ですんだのかもしれない。

 下半身の状態も気になり、ゆっくりゆっくり上体を起こしてみる。


(あれ・・・全然、痛みがないわね)

 腰回りや腹部にも痛みを感じることはなく、普通に起き上がることができた。きっと、私の前を走っていたシャーリー聖女は土砂崩れに巻き込まれることなく、私を助け出した後、私の意識が戻る前に治療してくれたのだろうと思い始める。


 両腕を伸ばして、両脚の太ももを触ってから膝をベットの上で曲げ伸ばししても問題なく動かすことができた。


(やったわ!どこも痛みがないし動かせるじゃないの!!!!!)

 私は、痛みなく身体を動かすことができたので、最悪の事態は免れたのだという喜びとともにガバッと勢いよくベットから飛び降りた。

 身体が動かせるなら、何も問題ない。早く私が目を覚ましたことを先輩聖女三人に知らせて、御礼を言わなくてはいけないと思っていた。


 その時の私は、まだ自分の置かれている状況に何一つも理解していなかったのだ。






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読んで下さりありがとうございます(*^-^*)

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