88 魔力植物調査 二日目①
はぁ~。昨晩はマヤゴン魔術騎士団のおまじないにドキドキしてしまって、興奮状態だったからなかなか寝付けなかったわ。
あの後、彼は第四区域に戻っていったのかしら。
私は、天幕から出ると大きく伸びをする。
天幕の入り口と四方に合計4人の騎士団の方が護衛として立って下さっていた。交代しているとは思うけれど、夜通し護衛するのは大変な仕事だと思う。
「おはようございます。護衛ありがとうございます」
私は、第五騎士団の団員にお礼を述べる。
「え、いや? 当たり前のことですから……」
まだ年若い団員の人は、逆に第三皇子から声をかけて、お礼を言われたことに驚いたのかあたふたしている。
そうか。この様子だと、他の皇子は騎士団の団員にお礼なんか言わないようね。
ひょっとしたら、アーノルド殿下も護衛してもらうことは当たり前のことだから、今までお礼を言っていないかもしれない。
でも、私の中身はただのEランク聖女。しかも今は、回復魔法すら扱えない。だから、せめてお礼くらいは言ってもいいんじゃないかしら。
「アーノルド殿下。おはようございます。良く眠れましたか?」
私が護衛をしてくれている団員と話している様子に気が付いたスックソン第五騎士団長が、天幕の前までやってくる。
「そうですね。あまり熟睡まではできていませんが、身体を休めることができました」
「それは、良かったです。朝食を作っているところなのですが出来上がりましらたら、天幕にお持ちしても宜しいでしょうか?」
ん~。せっかく城の外に出られたのだし、外で食べてみたいなぁ~。
すぐに返事をしない私を観察していたスックソン騎士団長が、再び別の提案をしてくれる。
「では、我々と一緒に外で召し上がられますか?」
「えぇ。そうします!」
私は、満面の笑みでその提案を受け入れる。
春めいてきて、空気も美味しいのだから、たまには外で食べたいわ。自然に囲まれて食事をするなんて、この上なく贅沢よね。孤児院にいたころは気軽に外で食べることができていた。もちろん、聖女見習いの時も。そのことを懐かしく感じて、遠慮なく彼の申し出を受け入れる。
わ~い。嬉しいわ。
できることなら、私も朝食づくり手伝ってみたいのだけれど……。よし、思ったことは聞いてみましょう。危険なことならスックソン騎士団長が許可を出さないでしょうし、言ってみないことには何も始まらないものね!
「スックソン騎士団長。一緒に食事の準備をしても構いませんか?」
「……えぇ。構いませんよ」
「ありがとうございます! 身支度整いましたらすぐに向かいますね!」
スックソン騎士団長の意外そうな顔には気がついていたのだけれど、私は天幕に戻って身支度を整えるとすぐに第五騎士団員の調理している場所に向かい、薬草サラダと卵料理を手伝った。
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「アーノルド殿下はお料理が好きなんですか?」
「そうですね。それもありますが皆さんとお話しながら作業するのが好きなんです」
まぁ、これは完全にリアナの感覚なんだけれど、騎士団員がどうやって食事の準備をしているのか実際に目で見て確認してみたかったというのが本音かしら。
「あ! これは疲労回復効果のある薬草ですよね? これをサラダにするんですか?」
「え? この葉っぱにそんな効果があるんですか?」
「我々、何も知らずにいつも食べていましたよ!」
「いつも皆さん、召し上がっていらっしゃるから元気なのですね! 納得です!!」
どうかしら。10歳の子供らしい会話になっているんじゃないかしら? そう思いながら、第五騎士団の人との会話を楽しむ。
横で、スックソン騎士団長もいたけれど、何も注意されてはいないから大丈夫……よね?
食事が終わると、今日の目的地についてスックソン騎士団長から説明を受ける。森の奥に自生している調査予定の魔力植物の種類を再確認をした後、魔物についての注意も受ける。
「ここから先は中型の魔物と遭遇する可能性がありますので、お一人にならないように常に我々の傍にいてください」
「はい。宜しくお願い致します」
今日は、魔物に注意することと……マヤゴン魔術騎士団が昨晩、天幕の中で聞いてきた、不審者とか刺客らしき人物には引き続き警戒しないといけないわね。
私と第五騎士団は、日が昇りと朝の肌寒さが薄まりかけた頃、次の目的地を目指しさらなる森の奥に足を踏み入れた。
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