83 魔力植物調査 初日
「あ、この木の芽も魔物が好みますよね?」
「そうですね。アーノルド殿下」
私と第五騎士団は早速、魔力植物の調査を始めた。
今日の調査の為に、魔物が好んで食べる魔力植物も毎日図鑑を眺めて記憶した。全部覚えているわけではないけれど、もともとベルフォン王国で聖女見習いをしている時にも薬草を覚えたり、植物の特徴の掴み方を練習していたので、さほど苦にすることなく楽しく覚えることができた。
でも、植物でも花の形や葉に特徴があるものは判別しやすいけれど、葉がツルンとしていて実に特徴がある植物になると今の時期は実をつけていないので、判断するのがとても難しいのよね。
「アーノルド殿下はしっかり魔力植物の特徴を覚えていらっしゃるのですね」
第五騎士団の団員が、褒めてくれる。
「いえ、現場に詳しい騎士団の皆様に比べたら、まだまだ勉強不足です」
ひょっとしたら、リアナが入り込む前のアーノルド殿下なら全ての植物を記憶していたかもしれないわね。
そんなことを思いながら、私の記憶ではまだまだ覚えきれていない植物が多いので、正直に勉強不足だと伝えておく。
「いえ。そんなことはございませんよ、殿下。我々はどうしても木の幹や葉の特徴で覚えることには長けていて、森に入る際の目印にもなるので慣れているのですが、逆に草として足元に生えている魔力植物にはどうして目がいかないので、殿下ほど種類を覚えていないのですよ」
スックソン第五騎士団長が、騎士団としての得意なことと苦手なことを教えてくれる。
確かに……視線が下にあるアーノルド殿下の方が、草の特徴は捉えやすいのかもしれないわね。
では、私は魔力草を中心に見て確認して行った方がよいかもしれないわね。
私と第五騎士団は役割を分担して調査をする。
馬で、調査する地点まで移動した後、馬から降りて歩いて周辺の植物を調査し、植物の確認を終えたら、次の調査地点まで再び騎乗で移動するという感じで、森の奥に入っていく。
今日は、森の中ほどにあるかつて村があったとされる場所に野営をすることになっている。
第五騎士団員の何名かは、先に廃村になっている村まで移動するようにスックソン騎士団長が指示を出す。
「どうして、先に廃村の方に向かわせるのですか?」
私は疑問をスックソン騎士団長に問う。
「あぁ。それはですね。たまにあることなのですが、廃村に野盗や賊が隠れ住んでいることがあるのですよ」
ひぇ~。確かに、それは先に確認しておいて欲しいわね。
人気がないと思って、近寄った廃屋の中に人が隠れ住んでいたら、ちょっと怖いもの。
ありがとうございます、騎士団員の皆様。
私は、心の中で感謝を述べる。
「定期的に見回りをしていても、賊が潜んでいることが多いのですか?」
「そうですね。賊も毎日同じ拠点にいる場合もありますが、そうじゃなくてグルグルと何か所か拠点を持っていて、捕縛されないように寝ぐらを移動する者もいるんですよ。だから、前回の見回りでたまたま捕縛されていないだけで、今日、遭遇しないとも言い切れませんので、先に本日の野営の場所に騎士を送り込んで、確認をしておくことも大切なんですよ」
「そうなのですね」
私は、知らないところで殿下としての安全管理を行ってくれている騎士団の皆さんの活躍を初めて知った。
アーノルド殿下とは、そういう高貴な身分の方なのよね。と、改めて感じる。
私もこの身を危険に晒すことがないように、くれぐれも注意して行動しないといけないと再認識する。
ついつい、孤児院出身のリアナ聖女だと意識してしまうと、やんごとなき身分の方の身体を拝借しているという意識が欠如してしまう。自分自身の身体ではないのだから、傷つけないようにしないといけないわね。
初日は、自分の身の安全にも注意しながら、廃村になっている村に無事到着することができた。
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