82 魔力植物調査へ
馬術訓練、風魔法、弓矢の訓練もそこそこに迎えた魔力植物調査の日。
アーノルド殿下の身体に入り込んだままの私、リアナはアーノルド殿下の愛馬に跨り、前後左右とも第五騎士団の団員に守られながら、第三区域に向かう。
まだ馬で颯爽と駆けるのは出来ないけれど、軽い足並みでパカパカと移動することはできるようになった。
始めは、体重移動も上手にできなくてお尻がかなり痛かったけどね!!
帝都の街中を騎士団と各皇子が分散して移動することで、帝国民の心に治安に関して安心感を与えることができるのだとライガーンが言っていた。
残念なことは、第四皇子と顔を合わす機会が設けられなかったということ。
第四皇子も魔力植物調査に初参加の為、準備で忙しいらしく、アーノルド殿下の予定と合わすことができなかった。
「う~。まだ朝は冷えるわね」
外套を纏っているけれど、春先とはいえ朝晩はまだ冷える。
アーノルド殿下の私は騎乗でプルプルっと軽く身震いをする。
いけない、いけない。
うっかり、リアナとしての素の部分が出てしまうと、どうしても女性の言葉遣いになってしまうわ。
周りには騎士団員もいるのだから、今、この瞬間から気を引き締めて、アーノルド殿下らしく振舞わないと。
はぁ~。二泊三日は常に気を張っておかないといけないわね。
体力だけじゃなくて、精神も疲れそうだわ。
その時。
遠くの方から空砲が聞こえてきた。
出立時間も第一皇子、第二皇子と順番に出立するのだけれど……その合図ね。……ということは、もうライガーンが出立したころかしら。
城門も第一皇子と第二皇子は北門から、第三皇子と第四皇子は西門から出立するので、第一皇子と騎士団の状況ははっきりと把握できない。
やっぱり、ちょっと心細いわね。
ライガーンは、いつも傍にいてくれるだけで、安心感を与えてくれていたのだと改めて感じる。
いなくなって初めて、気が付くものなのね。
でも、私だって二泊三日の魔力植物調査という公務をしっかりやり遂げて、その姿をライガーンに見せないといけないわよね。
公務を頑張って、戻ってきたらライガーンにいっぱい褒めてもらうわよ!
私はそう意気込み、アーノルド殿下の愛馬の手綱をしっかり握り締める。
「アーノルド皇子殿下。準備整いましたので、出立いたします」
馬術訓練で何度か指導してもらった第五騎士団のスックソン騎士団長が、私に出立すること知らせる。
「わかりました。宜しくお願い致します」
アーノルド殿下の返事を確認すると第三皇子の率いる第五騎士団は西門から出立して行く。
■■■
途中、二度ほど休憩を挟み、お昼前には第三区域の森林入り口に到着する予定になっていたけれど、予定よりも早く進めたようで思っていたよりも早くに担当区域に到着することができそうだとスックソン騎士団長から報告があった。
(第一皇子と一緒に出立したライガーンももう第一区域の救護所に着いたころかしら……)
ついついいつもの癖で、ライガーンは何をしているのだろうと考えてしまったわ。
私は右斜め横で並走して騎乗していたスックソン騎士団長に声をかけると、馬の歩みを遅くしながらスックソン騎士団長は私の横まで馬を寄せてきてくれる。
「第四皇子は、いつぐらいに第四区域の森入り口に到着する予定ですか?」
「そうですね。アーノルド殿下が出立して半刻くらいしたら出立する予定でした。第四皇子は馬車での移動ですので、もう少し時間がかかると思います。第四区域と申しましても、森林入り口の出発地点も別々でして、アーノルド殿下の入り口よりも南に位置しておりますので、あまり気にされなくても問題ないと思います」
騎士団長は「いつでも殿下の指示で森に入れます」と、何てことのない表情で教えてくれた。
そうなのね。ひょっとしたら、森林入り口付近で第四皇子殿下と顔合わせできるかしらと考えていたけれど、それも無理そうね。兄弟だというのになかなか会えないなんて、寂しいことだわ。第四皇子殿下もアーノルド殿下と同じ母で正妃である皇后陛下の皇子だとライガーンから聞いているけれど、こんなにも別々に育てるものかしら。
孤児院育ちの私には、よく理解できないけれど皇室というものは、そうなのかもしれないわね。
私は、第四皇子と会えなかったことを残念に感じながらも、自分の担当区域について意識を切り替え、森の中に第五騎士団と共に入って行った。
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