76 魔力植物調査前合同会議 【side ライガーン】
ついにこの日が来てしまった。
俺は、溜息をつきながら宰相である父の待つ会議室に向かう。
石床のコツコツと響く自分の足音を聞いて、緊張と不安が更に高まってくる気がしてくる。
魔力植物調査の各皇子と各騎士団の組み合わせは、ほとんど宰相である父が決めている。ひょっとしたら、皇帝陛下の意向を聞いた上で組み合わせているのかもしれない。
二人いる側妃の派閥による意図的な組み合わせにはなっていないとは思う。宰相である父の仕事は公平公正で行っていると信じてはいるからだが、裏で何か手引きがあった可能性も否定できない。しかし、皇子と騎士団の組み合わせについては口を挟める領分ではないので、委細はわからない。
毎年恒例行事であるから、恐らく昨年、一昨年の当たった騎士団とは別の組み合わせになると思っているのだが……。
宰相、各騎士団の団長と副団長が集まり、どこの地域を担当するのか言い渡される。
基本的に宰相が組み合わせを発表した後は、どの魔力植物を確認してくるのかという植物の話と、担当地域の土地の特徴、魔獣の特徴を確認するのが主になってくる。
きっと、俺自身は回復魔法が使えるから、例年通りだとするならば、森の外周付近に設置される四つの救護所のどこかの担当になるのだろう。
せめて、リアナがアーノルド殿下として参戦するなら、できるだけその地域に近い救護所に配置されたい。
俺は、今は魔力が高い皇子であるアーノルド第三皇子に就いているだけであり、彼が皇太子としてふさわしくないと考えられたら、第一、第二、第四皇子に今後、就く可能性だってあるのだ。
俺は次期宰相となり、帝国に身を捧げる立場にいるのだから、俺の私利私欲で皇子を選ぶ権限は無い。
でも、出来る限りアーノルド殿下の魂が戻ってきた時に、俺が傍にいないという事態は避けたい。
アーノルド殿下を幼い頃から、見守ってきたからわかる。
彼は皇太子としての器も帝国民を愛することもきっとできる人物なのだと。
■■■
会議は、予想通り宰相である父が皇子と担当地域の場所、騎士団を発表して、後は魔力植物の種類、よく現れる魔獣の情報共有を行って解散となった。
はぁーーー。
俺は心の中で落胆する。
最悪だ。何一つ俺が望んでいたようには配置されなかった。
魔力植物調査会までに、20年前の過去に行ってしまわれたアーノルド殿下の魂が戻って来るなら、何も問題はないのだが、まだそちらも解決策が出ていない今、リアナという女性がアーノルド殿下の中にいる状態で参加するには懸念が残る。
せめて、マヤゴン魔術騎士団長の率いる魔術騎士団か、ベン第三騎士団長のいる騎士団が一緒であれば心強かったのだが……。
それすらも、叶わなかった。もちろん、俺の配置も例外ではない。
アーノルド殿下の参加される地域とは、かなり離れた第一皇子殿下の担当地域の救護所に配置された。
決して、他の救護所の回復魔法を使えるものが不出来というわけではないけれど……俺の回復魔法より治すのに時間はかかるだろう。
肩を落として、会議室から執務室に戻る途中で、肩をポンっと叩かれる。
こんなに気安く触ってくる人物は振り向かなくても想像がつく。
「何、決まったことだ。オレらはやれるだけのことをやるだけだ」
そう、言うと俺と視線を合わすことなく、スタスタとマヤゴン魔術騎士団長は俺を追い越して歩いて行った。
「ははは。まさか、後輩のあいつに元気付けられるとは思ってもいなかったな」
俺は、今のアーノルド殿下の身体の中には、リアナというベルフォン王国で暮らしていた女性が入り込んでいると理解し、助力してくれようとしている心強い仲間がいることに感謝した。
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