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74 どうするリアナ聖女 

 ぼくとタチア聖女は、人に揉みくちゃにされながらもフォーレス医院に戻ってきた。


「はぁーーー。疲れたーーー」


 タチア聖女がため息をつきながら、医院の扉を開ける。ただでさえ重みのある扉がさらに重みを増しているかのようだ。


「お疲れ様。って、リアナ、大丈夫?? 顔真っ青じゃない!」


 シャーリー聖女が、ぼくの顔色の悪さに気がつき駆け寄ってくる。


「そうなのよ。リアナ聖女、噴水広場に到着するまでは元気だったんだけど、帰ってくる時からずっと顔が青白いの」

「そう……。きっと人が多かったのが良くなかったのかもしれないわね。人酔いしたのかしら」


 ……人酔いではないけれど、今はそういうことにしておこう。


 ぼくは、人酔いということでコクコクとうなずく。


「今、何か飲み物を持ってくるわね。ちょっと待ってて、二人とも」


 そういうと、タチア聖女とぼくは椅子になだれ込むように座り、シャーリー聖女が持ってきてくれた水をコクコクコクと一気に飲み干す。


「はぁ~。生き返ったわ。ありがとうございます、シャーリー聖女」

「ありがとうございます。幾分、楽になりました」


 タチア聖女とぼくは、シャーリー聖女にお礼を述べると、コップをテーブルの上に置き、そのまま突っ伏した。


「あらあら。よっぽど疲れたのね。でも、何の鐘だったかそろそろ教えてくれないかしら」


 横で、シャーリー聖女とのぼくたちのやり取りを静かに眺めていたトッシーナ聖女は、何があったのか待ちきれなかったようで掲示されていた内容を知りたがる。


「おめでたいことに、第一王子殿下がお生まれになられたそうですよ!」

「え!? それは、嬉しい知らせね!」

「だから、こんなにもあちらこちらで歓声が聞こえたり、お祭りのような騒ぎになっているのね!」


 タチア聖女の返答に納得がいった二人が、手を叩いて喜んでいる。


 さぁ、ぼくもシャキッとして確認しなければ!!


「あの……今回、お生まれになったのは第一王子殿下ですよね? 第五とか第六とかではないですよね?」

「……何を言い出すかと思ったら! 去年、国王陛下が王妃様とご婚礼を挙げられたばかりなのに、そう一気に何人も産めないわよ~」

「……そうですよね」


 あ~。どうやら、ぼくの予想は合っているようだ。

 自分の心臓に刃を向けるつもりで、次の質問をする。


「今年って、ベル歴何年でしたっけ?」

「もうや~ね~。人酔いすると記憶障害を起こすの?」

「今年は、ベル歴547年に決まっているでしょ? リアナ、大丈夫?」


 あーーーーーー。終わったーーーーーーー。

 お願いだから、その数字だけは聞きたくなかったーーーーーーー。


 そうか。そうなのか。

 やっぱりぼくがいるのは、ぼくが知っているラーン歴1567年、つまりベルフォン王国の暦でいうところのベル歴567年ではなくて、その20年前の547年にいるのか!! 


 アーノルド殿下としてのぼくは、まだこの世に生まれていないじゃないか!! 

 先日、送った手紙だって届くはずがないわけだ。

 城にはライガーンがいるわけではない。きっと彼はまだ子供のはずだ。


 あーーー。終わったーーー。

 帰れないーーー。

 このまま聖女のふりをして生きていくのか?! そうなのか?! 


 ぼくは、外見はリアナ聖女だというのに何度も頭を両手で掻きむしったせいで、妙齢の女性とは思えないくらいボサボサの髪で服装もヨレヨレの状態を先輩聖女に晒していた。 

読んで下さりありがとうございます。


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