73 違和感
「はぁ~」
「見える? リアナ聖女?」
「えぇ、見えます。待って下さいね」
ぼくとタチア聖女は揉みくちゃになりながらも、掲示を見て歓声を上げる人の大声で、王子が誕生したようだということはわかっていた。
でも、百聞は一見に如かず。
自分の目で確かめるべきだ。少なくとも皇族教育でそう教わってきた。
ぼく自身、自分でベルフォン王国のことを確認したかったというのもある。
視力の良いぼくは、リアナ聖女の身体でも視力が良いようなので、遠目でも文字が読めそうだ。タチア聖女に変わって文字を読み上げる。
「あぁ、やっぱりベルフォン王国に新たな命が生まれ、めでたく第一王子殿下の誕生をここに……」
あれ? どういうことだ?
「何よ、リアナ聖女。人の頭で文字が読めない?」
「……えぇ。すみません」
しばらく、頭の中を疑問が沸いてくる。
第一王子殿下はすでに御年20歳くらいの青年のはず。
じゃあ、ここに記されているの第一王子とは一体全体、誰のことを言っているんだ?
「あ! 私、見えたわよ!! 第一王子殿下の名は……ジオルド王子殿下って書いてあるわ!!」
ジオルド王子殿下? なぜ、同じ名前にしたんだ? 確かに同じ名前でも、親子でジュニアだとか名付けたりもするけれど。
そういうことなのか?
ぼくは、もう一度、張り紙を凝視する。一言一句違わぬように、目に焼き付ける。
間違いない。ジオルド王子殿下と書かれているな。
そこで、ぼくはもう一つの違和感に気が付く。
「ベル歴 1547年」
ん? ラーン帝国はラーン歴を使用していて、今年は567年。ベル歴で言い換えると……1567年のはずだ。なぜならちょうど暦の始まりが千年異なるから、ラーン歴に数字の1000を足したものが、ベルフォン王国で使用されているベル歴になるはず。
おかしい。ぼくの記憶が間違っているのだろうか。
ラーン帝国とベルフォン王国は暦の扱いが違うけれど、計算しやすから暦が変換しやすくて良かったな~とよくライガーンが言っているのを、何度も耳にしたことがある。
あれは、ベルフォン王国の暦の話ではなかったのだろうか……
そう、考えているうちに、タチア聖女がぼくの腕を引っ張る。
「さぁ、リアナ聖女! いつまでもここにいたら、後ろからの人に迷惑だし、人の流れに沿って歩かないといけないわよ!ほら!!」
タチア聖女がグイグイとリアナ聖女であるぼくの腕を力強く引っ張って、移動しようと促してくれる。
「そうですね。わかりました」
ぼくも、いつまでも揉みくちゃにされているのは嫌ななので、タチア聖女とともに噴水広場から遠ざかるように歩き出す。
でも、頭の中は暦の事でいっぱいだった。
ぼくの記憶間違いなのだろうか……。
何かがおかしい。
ぼくは、言い表すことができない不安にかられていた。
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