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72 鐘楼の鐘の音

 それから数日経った日のこと。


 リアナ聖女の中に入ったままのアーノルドのぼくと、先輩聖女の三人はフォーレス医院の中でいつものように仕事をしていた。


 すると突然。


 リーーーーーーーン ゴーーーーーーーン 

 リーーーーーーーン ゴーーーーーーーン


 けたたましい音で、鐘楼が鳴り響く。


 ぼくたち四人は、驚いて一度、医院の外に飛び出す。


「あれは、旧市街の中心の噴水広場にある鐘楼ですよね?」


 ぼくは、少し離れたところにある、ロントクライン公爵領の旧市街にある鐘楼の方を指差す。

 ここからは見えないけれど、音がする方角はそちらから聴こえる。

 以前、空中移動をしている時に上空から見つけていたので、場所は確認済みだ。


「そうね。この鳴り方だと、おめでたいことがあったのかもしれないわ!」

 シャーリー聖女が、鐘楼の鐘の鳴り方で吉祥の知らせだと教えてくれる。


「ねぇ、リアナとタチア聖女の二人で、ちょっと噴水広場まで行ってきてくれないかしら? ひょっとしたら、王家の号外紙が掲示されているかもしれないから、見てきて欲しいの。私とトッシーナ聖女はここで留守番しているから」


「わかりました。では、リアナ聖女は私と一緒に噴水広場に行きましょう」

「はい。かしこまりました」


 ぼくも先輩聖女の指示に従う。

 そうか。ベルフォン王国にお祝い事があった時のお知らせか。

 第一王子殿下は確か二十歳くらいだったはずだ。であれば、第一王子殿下のご婚約がお決まりになったとか、王女殿下のお輿入れが決まったとかだろうか。


 ぼくは、ラーン帝国で学んだ人物の名前を思い浮かべる。

 確か、国王陛下はガサト国王陛下で、第一王子はジオルド王子殿下、王女殿下は……えっと、どなただったかな。名前が思い浮かばない。

 こういう時に、さっと耳元で知りたいことを囁いてくれるライガーンの存在は本当に大きかったのだと、彼との生活を思い出す。


 四半刻ほどして、ぼくとタチア聖女の2人は噴水広場に到着した。

 いつもよりも、随分時間がかかってしまった。鐘楼の鐘の音を聞いて、群衆が押し寄せきているので、広場に近づくにつれて、人が増えていくのだ。


「ほら、リアナ聖女! あそこよ! 掲示されているわ!!」

「辿りつけるでしょうか」


 こんなに揉みくちゃにされたことなんて、今までの人生でなかった。

 初体験だ!


 人の目が無いのであれば、風魔法で空中を移動して掲示されている場所までいけるのだけれど、人様の頭上を飛ぶなんて失礼なことはできないし、そもそも目立ってしまう。


 仕方がない。リアナ聖女のこの身体だから、揉みくちゃ体験が経験できるのであって、ラーン帝国のアーノルド殿下として元に戻ってしまったら、一生体験できないはずだ。

 ぼくに触れるだけで、状況によっては不敬に当たる可能性だってある世界なんだから。


 そう思って、時間をかけてタチア聖女とはぐれないように、彼女の腕をリアナ聖女の姿のぼくの腕に巻き付けた。


「タチア聖女。しっかりここを掴んでおいてください。はぐれないようにしましょう」

「!? ええ、そうね」


 一瞬、戸惑うタチア聖女の顔が見えたけれど、お互い離れてしまったらきっと見つけ出すのは困難だ。

 最悪、空中から探せばすぐに見つかるだろうが、それは最後の手段であって、なるべくそうならないように気を付けようと思う。


「さぁ、行きますよ」


 ぼくは、そういうとタチア聖女と共に、彼女の腕の上にぼくの腕を重ねて、掲示されている場所まで少しずつ歩みを進めた。







読んで下さり、ありがとうございます!


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