70 アーノルド殿下の実力② 【side ライガーン】
「風魔法の腕前は……そうだな。手の平の上に風渦巻を作って、それを的に当てることはできるようになったな。精度も悪くない。ただ威力はまだ以前と同じレベルにはなっていないかな。中型魔獣の軽い足止めくらいはできるだろうが、致命傷を与えるだけの威力はまだないな」
「う~ん。どうなのでしょう。今回はアーノルド殿下の参加を見送った方がいいのでしょうか……」
俺の質問に、マヤゴン魔術騎士団長もベン騎士団長も沈黙のまま答えようとしない。
沈黙は肯定と同じ…。やはり、彼らも見送った方がいいかもしれないと思っているようだ。
「剣術訓練はまだ不安があるなぁ…一応、弓矢の訓練を始めたばかりだが、安全な位置で待機してもらって、弓を持って遠くから……という形なら参加できるかもしれないな。まだ的に当てるまではいかないが、練習すれば何とか間に合うかもしれない……」
「う~ん。弓ですか。剣を構えて接近戦で負傷する危険を考えれば、木の上など安全な場所にいていただく方がいいかもしれませんね」
俺は、空中訓練の成果も気になっていた。
以前と同様に屋根くらいの高さまで安定して飛び上がれるのであれば、避難が用意だし逃げる際にも役に立つだろう。
「マヤゴン魔術騎士団長。空中訓練はその後いかがですか?」
「それに関してだが、あのひどい空中酔いを起こされてから、二回目は行っていない。飛ぶことは可能だし、威力も問題ないが制御に問題があって、あらぬ方向に行ってしまわれる。今から、訓練をして間に合うかどうか……」
「ふ~む。それならば、手のひらの風渦巻の威力を上げた方が、すでに的に確実に当てられるのであればそちらを鍛えたほうがいい気もしますね」
「確かに。威力を上げられれば、安心できるだけの腕前になりそうではあるかな」
俺とマヤゴン魔術騎士団長、ベン第三騎士団長の方向性とすり合わせは終わった。
あと、アーノルド殿下にどの騎士団長が割り当てられるかが重要になってきそうだ。
「ライガーン殿は、アーノルド殿下に付き添うのか? 回復魔法の上級者がお傍にいた方がいいのではないか?」
マヤゴン魔術騎士団長と俺は同じことを考えていた。
例年ならば救護所で待機して、負傷した騎士の治療の任に当たるのだが、今年もそうなる可能性が高い。
他の回復魔法を使える者をアーノルド殿下の傍につけるよう手配しておいた方がいいかもしれない。
今年は去年とは違う。女性であるリアナがアーノルド殿下として参戦するのだから、何があるか予測不能の事態を想定して配置しておいたほうが良さそうだ。
お傍にいられないのであれば、できるだけの対策をしておきたい。
俺はそう思って動き出した。
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