68 暗雲立ち込める公務②
「ねぇ、ライガーン。具体的に魔物の動向を調べるのはどうやって行うの?」
私は、魔物に遭遇したことも目にしたこともない。そもそも、どうやって調べるのかがわからない。
「そうですね。まずはそこからですね」
冷静さを取り戻したライガーンは、詳細を説明してくれる。
「まず、冬の間は冬眠している魔物もいるので被害が少ないのですが、春先になると魔物が好みそうな魔力を含む植物がどれくらい芽吹きそうかということを調査いたします。この魔力植物の芽が少ないようですと、人里に下りてきてしまう可能性が高くなりますので、討伐する者を多く配置したり騎士団の遠征に行く回数を増やす必要が出てきます」
そうか。今は魔物があまり出てこない時期なのね。
だからベン騎士団長にしてもマヤゴン魔術騎士団長にしても毎日のようにアーノルド殿下の訓練に付き合ってくれていたんだわ。
「まぁ、年中、そういった調査は行っているのですが、騎士団に任せきりにせずに、皇子自らも現場を確認してきちんと魔物の動向を調べていますよ……というのが貴族だけでなく、帝国民にもわかるように、内外に知らしめる役割を担う公務になりますね」
「確かに皇帝陛下や皇子が帝国民の安全を気にかけて、動いてくれているのがわかるのだとしたら、民は安心できるよね」
確かに、私が孤児院やフォーレス医院にいた時も、似たようなことはあったわね。
魔獣ではなくて、野盗賊の類いだったけれど、騎士団や警邏隊が見回りをしていますと情報が回ってくると少なからず安心できていたわよね。
私のような武器を扱えない女性や、子供、お年寄りは戦う術がないから、このラーン帝国でも皇帝陛下の指示で、皇子たちが現場に出向いていると知らせることは良いことかもしれない。
「基本的には騎士団員が付き添いますし、魔獣の活動が活発化する前ですので、討伐隊のように仰々しい感じではありませんね。決められた場所を皇子が見回るのが役目ですので」
「じゃあ、そんなに危険じゃないんじゃない?」
私の考えは甘いのかしら? ライガーンの眉間にまたもや皺が寄っているわよ。
「それが、そうも言っていられません。魔獣が出てこない時期だけれど、大型の魔獣を森の最奥から獲ってきたから安心しなさいとかですね、魔力植物の群生地を見つけたから、そこは侵入しないようにとかですね、森に入っていることをいいことに命を狙ってきたりですね……」
「え? ちょっと待って! 命を狙ってくる可能性もあるってこと?」
「もちろんですよ、殿下」
そうなのか……。それは非常に危険だわ。自分の身を守れるようにしておきたいとは思って、剣術訓練も風魔法訓練も努力はしているけれど、誰かに暗殺されるかもしれないと考えた状態で、森へ赴く余裕なんて、私にはまだ無さそうだ。
アーノルド殿下! 今まで、よくぞご無事で!! そう申し上げたい。
何としてでも生還して、公務の役割も果たして、兄弟仲良く……は多分無理ね。
ひとまず、命を守ろう! だってアーノルド殿下のお身体だもの!!
そう決めた私は、まず簡単そうな魔力植物の知識を得ることから始めた。
できることから一歩ずつ、よね!!
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