65 呪い②
「殿下。そういえば、これも聞いた話ですけれど、この大陸にはいろんな部族がもともといて、それが戦争を繰り返し、人と人が集まったって国を成しているの過程があるのはご存じですよね?」
ライガーンは呪いの話の続きがあったことを思いだしたようだ。
彼は記憶を探すように、目線を宙に一度持っていき、それからまた視線を殿下に戻した。
「うん、理解しているよ」
私も、孤児院にいる時に部族が異なるという理由で迫害から逃れ、その旅の途中で両親を失ってしまった子供も一緒に生活していたから、部族があることも知っているし、それによる摩擦や衝突が起こっていることも知っている。
かくいう私も、記憶がないのだから、ひょっとしたどこかから迫害を受けていた部族という可能性もゼロではない。
「それですが、その部族が使ってきた呪いも、各々発展を遂げてきたので、その子孫、その血筋であれば視える……かもしれない……という非常にあやふやな噂話は聞いたことがあります」
「まぁ、確かに、部族ごとで言葉が違っていたり、習慣や儀式がもともとは違っていたからね。ふ~ん。そういう噂話があるんだね」
「いかんせん、その噂が真偽立証できるのかすら、私にはわからないのですがね」
「呪いにも何だか種類も、辿って来た歴史もありそうだよね」
「えぇ。だから現在では禁術にもなっておりますし、万が一、呪いが視えたとしても皆さん、言葉に出すのは奇異の目で見られる可能性がありますし、言わないかもしれませんね」
「そうかもしれないね」
私は、ライガーンの説明に納得できる部分があり、同意して頷く。
私も似たような経験があったなと思い出したからだ。
リアナとしてフォーレス医院に働き始めて、見習い課程が修了して、Eランク聖女として働き始めたばかりの時だったかな。
ローブを着ていた魔術師が来院したことがあったけれど、手からモヤモヤっとした黒い物が見えたような気がした。
あの男性は魔術で名前を書くというか貼り付けていたから、魔術が発動する時に立ち上る魔力の残滓なのかもしれない。
ひょっとしたら、呪いだった可能性もあるかもしれない。
私はEランクの聖女だから呪いは視えないし、恐らく魔術の何なのかもしれないけど……。それは、よくわからない。
目の錯覚だったかもしれないし、シャーリー聖女やタチア聖女など、他の聖女が何も反応していなかったから、自分だけしか見えていないものは見間違いだったような気がしてしまうもの。
あの黒いモヤモヤとしたものが、呪いとか身体に良くないものだったかもしれないけれど、あの時の私は、誰にもこのことを話さなかったものね。
他の人が見えていないものに関しては、口外しない方が良さそうだと無意識に判断したのかもしれない。
だから、ひょっとしたら、今の私はアーノルド殿下の中にいるけれど、誰かに私の呪いが視えているかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
まぁ、呪いが誰かに視えてしまうのは仕方がないとして、ひとまずリアナの身体に戻った時に、呪いを解けるようにはしておきたいわよね~。
急がないけれど、いつかは解呪したい。
そんな感じに思っておこう。
これが命を脅かすものだとしたら、必死で解呪方法を探すかもしれないけれど、無害なら慌てる必要はないものね。
私はとても気楽に考えていた。
だって、そうじゃない。どうしようどうしよう……なんて考えても、解呪できないものはできないんだから、放置しておくのが最善なのよ!
きっとね!!
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