64 呪い①
「あの……ね。もう一つ聞きたいことがあるんだけれど……」
「はい。私でお答えできることでしたら、何なりとどうぞ」
「えっと……」
どうやって、話を切り出そうか。
回りくどい聞き方は、得意ではないから、やっぱり疑問はそのまま聞くのが一番よね。
「ライガーンは、呪いとかって視えるの?」
「呪いですか?」
ライガーンの眼光が少し鋭くなり、殿下の目を見つめ返す。
不自然な質問だっただろうか……。でも、聞いてみたかった。
身体はアーノルド殿下であったとしても、中身は呪い持ちとされているリアナだから、殿下に悪影響を与えていないのかずっと気がかりだった。
「ライガーンは回復魔法がとっても上手でしょ? きっと腕前はラーン帝国でもすごい方なんじゃないの? よくわからないけど。だから、呪いを持っている人も視えたりしているのかなって思ったの」
私が、何に疑問を感じていたのか正直にライガーンに話してみた。
ライガーンは右手を顎に持っていき、どう話そうか少しの間考えているようだ。
はぁ。美丈夫は考える姿も様になるわね。
この姿のまま彫像にしておきたいくらいだわ。
ライガーンを思う存分見つめながら、彼の考えがまとまるのを私はおとなしく待つ。
「まず……。結論から申し上げますと、呪い自体が視えたことはございません」
「へ? 一度も?」
意外な返事が返ってきて、間抜けな声が出てしまう。
驚いて目を丸くしている私の顔を見て、クスッとライガーンは笑う。
「えぇ。一度もありません。殿下が、何を心配されているのかはわかりかねますが、そもそも回復魔法が上手だからといって、呪いが視えるわけではないはずです」
あれれ? そうなの?
てっきり回復魔法が使えるランクの高い人は呪いが視えていて、解呪ができるのだと思い込んでいた。
「私が知っている情報ですが、回復魔法が使える研鑽を積まれた聖女は呪いを視ることができる……そのように聞いたことがあります」
そうか。ただ単に回復魔法が使えても、呪いが視えるわけではないのか。
聖女でないと視えないのか……。
「ただ……。これは、一般的に言われているだけで、本当に聖女にしか視えないのかと言われると、男性でも視える者もいると思っております。誰が視えているのかは……わかりませんが」
そうか……。そうなのか。
ひょっとしたら、男性でも視えている人がいるということか。
「あとは、そうですね。呪いは禁術とされているので、そんなに見かける機会が多くないということもあります」
禁術か……。それは、そうかもしれない。
人に呪いをかけるくらいだから、何かしらの代償が必要にはなってきているのだろう。
「ただ、禁術であってもゼロというわけではありませんので、この世のどこかで存在しているのは間違いないでしょうね」
「そうなんだ……」
やっぱり呪いは存在しているらしい。国が違ってもあるのか……。
「昔は国ごとに魔術が異なり、それに伴って呪い、呪術の方法もかけ方も多種多様と言いますか、たくさん存在しておりました」
「へぇ~。国ごとで魔術が異なったりするんだね。同じ大陸だから、同じ魔術じゃないの?」
「それは、呪いの儀式に必要な物が手に入る地域と手に入らない地域とがあり、自然環境や魔術を扱う者の技量で独自に変貌を遂げていったようだ……と言い伝えられていますね」
そうだったのか~。
もし、アーノルド殿下の中にいる私の呪いがライガーンに視えているとしたら、あわよくば解呪までしてもらうことはできないかしら?と目論んでいたけれど、視えていないのなら解きようがないし、そもそもライガーンは視えないようだ。
な~んだ。呪いが殿下に害を成していないか心配していたけれど、ライガーンに全く視えていないなら判断しようがなかったわね。
まぁ、今のところ私は元気なんだし、多分、気にするほど強い呪いでもなさそうだから、神経質にならなくても良さそうね。
ちょっと安心したわ。
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