56 新たな訓練
騎士たちと走り込みを終えた私は、騎士たちにお礼を述べて、次なる稽古の剣術訓練の準備を始める。
「おはようございます。アーノルド殿下!」
「おはようございます! ベン騎士団長!!」
よしよし。今日の剣術訓練の担当教官はベン騎士団長ね。
日にちや仕事によって、別の騎士団長が担当することも多いけれど、一番多く顔を合わせるのはベン騎士団長だった。
私は初日の悔しさをバネにベン騎士団長には、もともとのアーノルド殿下と同じレベルまで早く指導して欲しいとお願いをしていた。
まだまだその域に達していないという自覚はあるのだけどね。
「殿下は今日も、走り込みをされていたのですよね? 先ほど、一緒に走っていたという騎士と、そこですれ違ったのですが、殿下は呼吸も安定して走っていましたよと褒めていましたよ」
「え?! 本当ですか? 少しは体力ついてきているかなとは思っていたのですが、自分ではよくわからなくて……」
「もう以前と同じくらいに体力は戻ってきていると思いますよ。後は剣の技術ですが……」
その先をベン騎士団長ははっきりとは言わない。
剣術はまだまだということね。仕方がないわ。
こればかりは、幼い頃から訓練してきた殿下に一朝一夕で追いつけるはずもないもの。
私なりに地道に上達していくしかないわね。
しかも左利きの私が右で練習しているのだから、利き手とは異なるし、上達するのにはもっと時間を有するでしょうね。
「まぁ、殿下は慌てなくてもまだ身体も成長途中ですので、剣術はゆっくりで構わないかと思います。今日は趣向を変えて、弓でもやってみましょうか」
「え! 弓? うまく引けるといいけど……」
以前のアーノルド殿下がやったことがあるのかわからなかったので、初心者ですよとは言えなかった。
「何事も最初からうまくできる人なんておりませんよ。ひとまず気楽にやってみましょう」
今日は、急遽、弓の練習をすることになった。
弓なら、ベルフォン王国に戻って、聖女としての職を万が一失ったとしても、自分で野うさぎくらいは狩れるようになれば自立して生きていけるから、いいかもしれない!!
よし、教えてもらえる機会なんてそうそう無いんだから、教授していただいて、ちゃっかり、そしてしっかり習得しましょう。
そういって、殿下用に用意されていた小さめの弓を引いて、構えるところから練習を始める。
これは……腕の筋力だけでなくて、下半身の安定性と背筋も鍛える必要が出てきたわね。新たな、筋力トレーニングのメニューを考えて作ってもらったほうがいいかもしれない。
殿下がこの身体に戻ってきた時に必要な技術あり、将来、身を守るために必要になってくるかもしれないから、真剣に取り組まないと!
罷り間違って、私が殿下の身体の中にいる時に、誰かに襲われてしまったら、あっという間に命が奪われてしまうわ。そんなことをしたら、アーノルド殿下は一生、この身体に戻ってこれなくなってしまう。
それだけは断固阻止するために、私は弓の訓練も少しずつ習得していこうと決意した。
読んで下さり、ありがとうございます。
アーノルド殿下、訓練忙しくなってきましたね。でも、きっと彼ならまだまだ余力があるでしょうねと思って、書いております。
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