55 騎士との交流
さて、今日も勉強に剣術に魔法に、忙しいけれどコツコツ頑張るわよ!
私は頬を両手でポンッと叩く。
傍から見たら、リアナの私ではなくてアーノルド殿下が頬っぺたを自分で叩いているように見えるから、廊下を歩きながら周りの人がいない時にやるようにしている。
「よし! 今日も気合が入った!」
私は、週に3日ほど行っている走り込みを最初にして、身体を温めてから剣術訓練に参加するようにしている。
引きこもっていた一か月の間に、どうやら体力も落ちていたようなので、持久力を養うためにも走るようにしている。
自主訓練というとでもいうのかしら。
だって、初めての剣術訓練の時のベン騎士団長の残念そうな顔が、未だに頭から離れられないんだもの。
悔しいじゃない。
アーノルド殿下が今まで頑張ってきた能力を私が台無しにしている気になってくるし、彼の今までの努力が無駄だったと他の人には見られているかもしれないじゃない。
やるわよ! 汚名返上作戦をね!!
だから、早くもともとアーノルド殿下があったとされる技術までに追いつきたくて、私なりに努力はしているつもり。
剣術訓練を行っている訓練場の中を、いつものようにグルグルと何周か走っていたら、最近では、殿下を見かけた騎士の人たちが声をかけてくれるようになった。
「アーノルド殿下! おはようございます!!」
「我々もご一緒しても構いませんか?」
「もちろんです! 宜しくお願い致します!!」
いつの間にか、顔なじみになった騎士も何人かいる。
今日は、私以外に三人の騎士団員が隣と前後に分かれて、並走しながら一緒に足並みをそろえて走ってくれる。
殿下の歩幅だから一歩が小さくて、彼らにとっては走りにくいだろうと思われるのに、わざわざ私というか、アーノルド殿下の走る速度に合わせて走ってくれる。
そういう優しさが、伝わってくる。
「殿下とご一緒できて、我々は朝から最高ですよ!」
名前は聞いたこともないけれど、彼らは楽しそうに付き合って走ってくれている。
「今朝は何をお召し上がりになりましたか?」とか「好きな色は何ですか?」とか「新しい菓子店ができましたよ」とか、いつもくだらない質問や話を少し交わすのが、私も好きになってきていた。
きっと、16歳のリアナと同じくらいか20歳前後の団員のようで、私と年齢が近いせいもあるかもしれない。
私もとても話やすく、楽しい時間を過ごせていた。
アーノルド殿下に興味を持って、一緒に走ってくれる人がいるなんて、有難いことね。
おっと。いけない。
さきほどの騎士団員の質問に答えておかないといけないわね。
本当の殿下の好みはわからないから、ひとまず私、リアナの好みをお伝えしているけど、仕方ないわよね。何が好きだと答えたか、また日記に書いておけば、殿下がこの身体に戻られた時もうまいことやってくれるに違いないわ。
私は、殿下の身体に入り込む前から、騎士の方々が殿下の訓練に付き合うことが多かったのだと思っていたけれど、そのようなことは行われていなかったという事実を私は知らずにいた。
本当は、一人で走り込みをしている私を気遣って、ライガーンとベン騎士団長が他の騎士団員に並走をお願いしていたとは知る由も無かった。
しかも、騎士団員と交わした内容が全て、ライガーンに報告されて筒抜けだったとは。
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