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54 アーノルド殿下へのメッセージ

 まだ明け方は冷え込むけれど、窓から差し込む朝日を浴びて、私は気持ちよく伸びをする。

 いつものように身支度を整え、歯を磨くとポロンと口の中から何か出てきた。


「あれ? これは……歯!」


 私は、慌てて鏡に飛びつく。

 どこかで無意識にぶつけたとかじゃないよね? 折れたわけではないよね?

 口を大きく開けて、どの歯が抜けたのか確認する。


「前から1,2,3,4……。4番目……ということは、乳歯ね!」


 良かった~。寝ぼけてアーノルド殿下のお身体に傷をつけたわけではなかった。


「きっと、グラグラしていたのね。そっか、そっか~。まだ成長途中だものね!」


 もう一度、鏡で確認すると、抜けた歯の下から永久歯の先が少し顔を出していた。


 周りの人にはアーノルド殿下の姿が見えているから、きっと「歯が抜けましたね!」とか言われるかしら。

 4本目だから、にぱっと大きな口で笑わないと、抜けていても誰も気がついてくれない可能性もあるわね。


 それにしても、歯が抜けてそれを指摘されて喜ぶという、やり取りが再びできるなんて思ってもいなかったわ!

 殿下にとってもきっと喜ばしい貴重な体験なのに、私が身代わりで申し訳なく感じる。


「そうだ!」


 私は、今、抜けた歯を紙で包んで、いつ抜けたのか日付を書いて、殿下の引き出しに「おめでとうございます!」とメモと一緒に入れておくことにした。


「こうしておけば、いつか入れ替わりが元に戻った時に、殿下の手元に歯も、抜けた時のお祝いのメッセージも届くものね! 私ってば、天才!!」


 包まれた歯とメッセージの他に、この引き出しには私が殿下の身体に入った日からつけている日記が入っている。

 実は、入れ替わった初日に何冊か線だけ引かれた本をライガーンから受け取っていたので、文字の練習用や、マナーでならったことを書きとる以外に、そのうちの一冊を日記にしていた。

 文字はラーン帝国語は不慣れなので、すべてベルフォン王国語で書いてある。


 いつか、殿下がもとの身体に戻った時に、私の日記を見れば、どんな生活をして、誰と交流していたかわかるかもしれない。

 そう思って書き留めている。

 翻訳してくれないと読めないかもしれないけどね! 


 この日記を見れば、入れ替わっていたのが夢ではなかったと実感できるかもしれないし……。

 殿下が、ご無事で戻ってこれるとしたら…だけれど。


 きっと、大丈夫。殿下はご無事のはず。


「ベルフォン王国に早く、こないだ送った手紙が届かないかな~。まだ、私自身が自分の姿が見えているということは、リアナ聖女の私は生きているのよね? 私、成仏できていない魂だけだってことはないでしょうね? まさか殿下が私の代わりに聖女をやってくださって働いていたりして!! うふふふふ」


 そんな想像が、本当に合っていたとは考えてもいなかった。

読んで下さり、ありがとうございます!!

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