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52 色褪せた手紙① 【side ライガーン】

 俺は引き抜いた右手に掴んでいる物を、よく見ると経年劣化で日焼けした一通の手紙だった。


「本当に…あった……。すごいな、母上の記憶は……」


 ゆっくり表面の文字を指でなぞると、確かに当時、城にいるはずもない俺の名前がそこに書かれている。

 そっと、裏を見ると送り主の名前は『リアナ』そして、少し間隔を開けたところに『A』と書かれていた。


 破れないように、そっと中の手紙を出してみると、二行だけ文字が書かれていた。


『私は今、ベルフォン王国のフォーレス医院で元気に働いています。手紙を頻繁には出せません。また会いたいので、是非にこちらに来てください』


 そう書いてある。インクや紙質も安い物を使用したせいか、ところどころ文字がかすれたり、滲んだりして読みにくくなっている。消印を見ると、今から20年ほど前の日付が押されていた。


「確かに……フォーレス医院と書いてあるな。一体、どういうことだ?」


 もう一度、手紙の文章を読み返す。


「『また、会いたい』ということは、俺が以前、会ったことがある意味だろうな。リアナという名前に覚えは全くないのだが……」


 ひとまず、先日、殿下が手紙を送ったフォーレス医院とこの手紙のフォーレス医院は、きっと同じ場所を指しているのだろう。


「う~ん。ダメだ! わからない!! この手紙も婚約者になりたいとか、そういった内容では無かったしな」

 一旦、この手紙は城に持ち帰って、ゆっくり考えてみよう。



 俺は、手紙が本当にあったことの御礼を両親に伝え本邸を離れ、日付けが変わる前に城にある自室に戻ってきた。


「まぁ、またマヤゴンにもこの手紙を見せてみれば何かわかるかもしれないなぁ」


 俺は、今日の出来事を思い返しながら寝台に横たわる。目が冴えてしまってなかなか寝付くことができない。

 そういえば、あの手紙の文章もベルフォン王国語で書かれていたなぁ……。


 ここ最近、ベルフォン王国語の文字をどこかで見たなと思ったら、殿下が書いた手紙の文字だったことを思い出す。


「同じベルフォン王国語でも、書き手が違うと全然別の文字に見えるもんだな」


 改めて、イチゴ柄に書かれていたベルフォン王国語を思い出して、整った滑らかな文字だったなぁと思い描く。

 本邸から持ち帰った手紙には『私は今、ベルフォン王国の……』と書かれていた。


「今ということは、以前は別の場所にいて、そこで俺に会ったことがあるっていう解釈で合っているのか?」


 俺は、深夜の暗闇の中に質問を投げかける。

 手紙の文章が、やたら短い事も気になる。

 あの短い文章の中に、何かヒントが隠されているのだろうか。


「頻繁に出せないというのは……どういうことだ? 忙しいからか? あと考えられるのは……安物のインクを使っているということは貴族ではないだろう。困窮していて、あまり出すことができないとも受け取れるなぁ」

 

 あと、違和感があるとすれば、「リアナ」という名前に似つかないほど、力強い文字。女性が書いたようには見えない。どちらかというと男の文字に見える。


「はっ!! まさかな……」


 そう思い立ち、寝台から飛び起きてサイドテーブルの上に置きっぱなしにしていた色褪せた手紙を手に取り、慌ててランプに火を灯す。

 ベルフォン王国語で書かれた中の文章ばかりに気を取られていたが、宛先に書いてある俺宛ての名前はラーン帝国語で書かれている。

 

 それを指で一文字ずつなぞっていきながら、思い出す。


「間違いない……」

 俺は見慣れているのに、ここ一か月以上、目にしていなかった主の筆跡を見て、気持ちが高ぶった。


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