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51 ライガーンへの手紙 【side ライガーン】

「ほら、あの名前ってフォーレス医院じゃなかったっけ?」


 母が思い出したように、語り出す。


「どこかで聞いたことがあるのかい?」

 父は、まだ思い出せないようだ。


「ほら、随分と前になるけど、ライガーンが子供の時に、なぜか城の執務室にライガーン宛に手紙が来たことがあったじゃない? それで、宰相のご子息宛ての手紙がなぜか城に届いたんだって言われて、手渡されたからって、この家にその手紙をあなた、持ち帰って来たのを覚えていない?」


 しばらく、記憶を辿っていた父もどうやら思い出したようで、ポンッと左の手のひらを右手のこぶしで軽く叩いた。


「あーー。あったね、そんなこと。それで、その手紙がどうしたんだっけ?」

「ほら、どこかのご令嬢からの婚約者希望の手紙かしらって言って、送り主を見たらベルフォン王国から送られてきていたじゃない?」

「あぁ。そうだった、そうだった」

「それで、その送り主がベルフォン王国のフォーレス医院って書いてあったような気がするわ!!」

「あ~、そうだったかな。ベルフォン王国からの手紙だったことは覚えているけれど、フォーレス医院って書いてあったかは、覚えていないなぁ」


 父と母が二人で思い出しながら会話を繰り広げる。

 確かに、子供のころに誰かわからない遠い国から手紙が来たことがあった。それは俺も覚えている。……が本当にフォーレス医院と書いてあったのだろうか。


「ちなみに、その手紙ってもう処分されていますよね?」

 

 俺は、さすがに手紙に関する記憶がほとんど残っていないが、受け取ってから数年たった手紙なら、その後、処分するのが当たり前だろう。


「何を言っているの? あなたの部屋の机の引き出しに、あなた保管していたじゃない? 覚えていないの?」

「……え? 私が? 机の中ですか?」


 自分の中では、そんな手紙を保管した記憶はないのだが、かなり昔のことなので俺が忘れているだけかもしれない。

 記憶の中で、ぼんやりと子供の頃に使用していた机の引き出しの中をイメージしてみる……。

 確かにいつから保管していたのか、それすらもわからないが引き出しの一番最奥に手紙があったような気がする。


 母の話を聞いているだけでも、少し気味が悪かったがベルフォン王国から来た手紙ということに関しては父も母も覚えていた。

 ということは、間違いなくベルフォン王国から俺宛てに手紙が来たのは間違いなさそうだ。


「父上、母上、すみません。気になるので、今すぐ自室の机の引き出しを見に行きたいのですが、これで食事会の席を離れますことをどうぞお許し下さい」


「えぇ、もちろんよ。私の記憶が合っているといいのだけれど……。何かあなたの探している情報が掴めるといいわね」

「あぁ。ここはもういいから、早く確認してみなさい」

「ありがとうございます!」

 

 両親は快く、離席を許してくれる。

 御礼を両親に述べた俺は、走りたくなる衝動を押さえながら、子供の頃から使っていた本邸の自室に足を踏み入れる。


 俺がいなくても、きちんと掃除が行き届いていて、少し冷たい夜風が窓から入ってきてカーテンがユラユラと揺れているのがわかる。

 俺が本邸に来るということで、この部屋に入室するかもしれないと気を利かせてくれていた使用人たちが、すでにランプに火を灯しておいてくれたので、部屋の中は夜なのに十分明るかった。

 

 俺は、急いで木でできた机の前まで行き、引き出しをガタガタと音を軋ませながら大きく開けて、右手を奥まで突っ込んでみる。

 記憶の中と同じ場所に、確かに手に紙の感触があり、それをギュッと掴むと俺は勢いよく引き抜いた。


読んで下さり、ありがとうございます。

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