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50 縁談対策家族会議 【side  ライガーン】

 俺は予定通り、黄昏時には本邸に着いて久しぶりに父母と食事をする。

 予定が合わなかった弟妹とは今回、食事を共にすることはできなかった。

 幼少期から変わっていない料理長の料理に、懐かしい味がして舌鼓を打つ。


「いや~、それにしてもアーノルド殿下が快復されて本当に良かったなぁ」

「そうねぇ。意図せずに頭をぶつけられるとしたら、さぞかし痛かったでしょうし。打ちどころが悪くなくて良かったですわね」


 父も母も殿下自身の話を本当に信じているのか、とても心配していた。

 まぁ、頭はぶつけられてはいなさそうだが、代わりに別の問題を抱えているのだが。


「皇帝陛下もとても心配しておられたのだぞ。アーノルド殿下にもその旨、伝えてもらえるだろうか」

「はい、かしこまりました。父上」


「それは、そうともうすぐ始まる社交シーズンについてだが、そろそろお前も婚約者を決めた方がいいのではないか? お前との婚約を希望されているご令嬢からの縁談の申し込みを会わずして断り続けるのにも、限界があるからな」


 やっぱり、その話か……。

 風除けにどなたか一人のご令嬢を選ぶにしても、あとあと面倒になりそうだから、そんないい加減なことはできない。


「父上、申し訳ございませんが、今はどのご令嬢とも婚約するするつもりはございません。アーノルド殿下を支えることに注力したいのです」


「う~ん。お前の気持ちもわかるがな、婚約者が決まるまでは、永遠に縁談が持ち込まれるわけだから、こちらの苦労も多少考慮してもらわないと困るんだがな……」


 確かに父の言うことにも一理ある。全ての縁談の申し込みに返事をしていたら、ナタディー公爵としての仕事にも影響が出てきていることは予想がつく。


「う~ん。ねぇ、ライガーンには気になる女性はいないのかしら? 別に好きでなくても、想いを寄せている方がいるからごめんなさいって伝えたほうが、何度も縁談の申し込みをして来なくなるんじゃないかしら?」


「おぉ、それもそうだね。何となくでもいいから、気に入っている女性はいないのかね?」


 仕事ばかりの俺にそんな女性がいるはずもない……と思ったが、一瞬、あることを思い出す。

 殿下の中にいる女性は一番、俺に接している中で身近な女性だな。未だにどこの誰かもわからないが、心根がいい人物なのはわかっている。

 そう思い出して、クスッと両親の前で笑ってしまったのがまずかった。


「あら! 気になる方がいるのね?」

「おぉ? そうなのか? それじゃあ、断る口実もできるじゃないか!」


 一番身近な女性がいるだけであって、愛だの恋だのそういう関係ではない。むしろ、誰だかわからないんだぞ!!

 と、叫びたいが、まぁ否定せずにこのまま父と母が縁談が断りやすいなら良しとするか……。

 俺にとっても、それが一番仕事に影響が少ないように思えて、思わず首を縦に振ってしまう。


「そういうことにしておいていただいて構いません……」


 俺には、どうやら想い人がいるから縁談の申し込みはやめておいた方がいいという今シーズンの縁談対策家族会議は無事に終了した。


 その後も、デザートがくるまで両親とはたわいもない情報交換をしていたのだが、俺はふと、俺自身で思い出せないキーワードについて、両親なら何か知っているかもしれないと思い、何の気なしに尋ねてみた。


「最近、フォーレス医院という言葉を耳にしたら、どこかで聞いた名前だなぁ…とは思うのですが、どうにもこうにも思い出せません。父はこの言葉を聞いて、何か思い浮かびますか?」


「う~ん。聞いたことがないなぁ。いったいどこの領地にある医院なのかい?」


 やはり、父が知るわけがないか。

 そう思っていた矢先。

 いつもは、ほわわんとしたおっとりしている母が、何かを思い出したように右手の人差し指をピンと立てた。



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