44 回復魔法が使えないリアナ聖女②
「じ、実はですね……」
ぼくは、リアナ聖女の人生を台無しにしてしまわないかと緊張のあまり硬く手を握り込む。
「実は、回復魔法が使えなくなったんです……」
ぼくは、三人の先輩聖女の答えが怖くて、目をつむったまま、うつむく。
沈黙が怖い……。
他人の人生なのに、ぼくが告白して大丈夫だったのかと後悔し始めた時。
「な~んだ! そんなこと?!」
「やっだ~。リアナ聖女が眉間に皺を寄せているから、何事かと思ったわよ~」
「ほんと、ほんと!! びっくりさせないでよね!!」
「……へ?!」
ぼくは、予想外の言葉に思わず間抜けな声が出てしまう。
きっとリアナ聖女の顔も、ものすごく弛んだ表情になっているに違いない。
「え? そんなことってレベルではないですよね? 聖女なのに回復魔法が使えないんですよ? いいんですか?」
「あっははは。まだ心配しているわよ」
「そんなに不安にならなくても、大丈夫よ~。回復魔法が使えなくてもリアナはリアナでしょ??」
「そうよ。回復魔法が使えないからって追っ払ったりしないわよ~」
三人とも口を揃えて、問題ないよと言葉を投げかけてくれて、涙腺が緩む。
何ていい人に囲まれているんだ。恵まれているな、リアナ聖女は。
安心していいようだぞ。
ぼくは、心の中でリアナ聖女に報告をする。
「私はもっと怖い想像しちゃったわ~。リアナ聖女が治せない病にかかっているとかさ」
「私は、リアナがこないだ助けてもらった騎士様のどちらかに一目惚れして、恋仲になって、結婚するから医院を辞めますとか言い出すかと思ったわ~」
「私はね~、先輩たちにはもう付き合いきれませんって愛想つかして、他の医院に転職するかと思ったわ~」
三人とも、それぞれ想像した内容を口に出して、「え! 確かにそれも困るわよね~」とか「さすがにそれはないでしょう!」とかなんとか笑いあっている。
杞憂だったのか……。そうなのか。この人たちは回復魔法が使えなくなったとしても、リアナ聖女を受け止めてくれるだけの広い心を持っていたんだな。
良かった……。本当に良かった……。
ぼくは、心の中で、安堵のため息をつく。これで、リアナ聖女として職を失うことがなく、ひとまず今の生活を維持することができる。
でも、いつまでもこの目の前の優しさに甘えていてもいけない。
そう思った僕は、もう一つの告白を打ち明けることにする。これは打ち明けても、リアナ自身がこの身体に戻ってきたとしても、引き続き問題はないに違いない。そう判断したからだ。
「みなさんの温かいお言葉に感謝申し上げます」
ぼくは、三人に御礼を述べて、彼女たちの笑いが収まるのを待つ。
「相変わらず、口調が硬いわ。どうしたのよ~」
「本当ね。回復魔法が使えなくなったことよりも、あなたの口調がおかしいことの方が問題よ!」
「そうよ。どこかの貴族と話しているみたいで、おかしな感じ。ふふふふふ。笑いが止まらないじゃないのよ~」
そうか。この口調の方がインパクトがありすぎて、彼女たちは何かツボにはまってしまっている状態らしい。もっと砕けた言い回しを練習することが今後の課題だな。ぼくは、今日の改善点を脳内でメモを取る。
「それで…ですね。もう一つお伝えしたいことがあります」
ぼくは、彼女たちに向かってもう一つの報告を行う。
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