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43 回復魔法が使えないリアナ聖女①

 ぼくは、アーノルド。まだリアナ聖女の身体の中にいる。


 この身体での生活も少しずつ慣れてきてはいる。浴室の鏡に映るリアナ聖女の顔を見る時以外は。

 朝、寝ぼけた状態で鏡を見ると今でも自分のアーノルドの顔が映らないから、身体が一瞬ビクッとする。


 今日は、一週間ぶりにフォーレス医院を訪れる予定になっている。

 そう、リアナ聖女の仕事が再開するからね。


  本当は宿舎と医院は近いのだから、毎日、医院にリアナ聖女の元気な姿を見せに行っても良かったかもしれないけれど、風魔法の訓練をやっておきたかったから、医院には全く顔を出さなかった。

 もともとは、ぼくがゆっくり休息できるようにと配慮してくれた上で、提案してくれた一週間の休みだったんだし、出歩いているのは良くなったかもしれないけれど、仕方がない。


「はーーー」

 少し、今日は気が重たい。ぼくの言動でリアナ聖女が職を失う可能性だってある。

(さて……ついにこの日がやってきてしまったな。リアナ聖女としてやれるだけのことはやってみるからな!)


 すでに医院に到着しているのに、入り口の扉を開けられずにいるぼくは、医院の外窓に映し出された自分の姿を見て、リアナ聖女に呼びかける。もちろん、返事はないけれど。


 ぼくは、あれこれ対策を考えた結果、方向性を決めた。

 正直が一番!


 ただでさえ、中身はリアナ聖女ではないのだから、その時点でぼくは嘘っぱち聖女に間違いないのだ。

 できるだけ、誠実なシャーリー聖女を含む、先輩聖女につく嘘は少ない方がいい。

 そう判断した。


 よし、行こう! 


 握り閉めたドアノブについ力が入ってします。

 ぼくは、他人の身体でドキドキしながら医院の扉を開けた。

(初めての職場体験みたいだ!)


「おはようございます!!」


 鏡に映るリアナ聖女の顔は何度も見ている。ぼくが笑うと彼女も鏡の中で笑うし、ぼくが頬っぺたをふくらますと彼女も同じようにふくらました。別人だけど、相手に与える表情はぼくの顔と連動している。だから、今日はできるだけ笑顔を意識しないといけない。


 ここ数年、母が亡くなってから、自分でも上手に笑えずに不自然な貼り付けたような笑顔になっていることはわかっていた。

 今日は、そうならないようにしないといけない。

 リアナ聖女の笑顔をイメージして、彼女ならこんな口調で挨拶をするのではないかという想像でやってみた。


「あら~! リアナ聖女のおでましよ! おはよう!」

「おはよう、リアナ聖女! 調子はどう??」


 トッシーナ聖女とタチア聖女は、ここ連日の出勤にも関わらず、疲れた表情を全く見せずに手を振って挨拶を返してくれる。

 後輩思いの良い先輩聖女って感じだ。


「おかげ様で、元気にはなっております。……でも、大事なことをお伝えしないといけなくて……」


「あら? そうなのね。まだシャーリー聖女が来られていないから、じゃあ来られたら……」

 と、トッシーナ聖女が話をしている途中で、ちょうどシャーリー聖女が扉を開けてやってきた。


「みなさん、おはようございます! リアナもゆっくり休めたようね。とても顔色がいいわ!」

「ありがとうございます」


 ぼくは先輩聖女のお三方が全員揃ったのを確認してから、重大な告白をする。


「あの……シャーリー聖女、この度は治療していただきありがとうございました。トッシーナ聖女とタチア聖女のお二方にも、多大なるご迷惑をおかけいたしましたこと、心よりお詫び申し上げます」


 ぼくは、リアナの聖女としての心証が悪くならないように、できるだけ丁寧な言葉を紡いでいく。

 御礼もお詫びも大切だから、きちんとしないとね。


「嫌だわ、リアナ。そんなにかしこまらないで頂戴。何だかこっちがドキドキしてしまうじゃないの」

「そうよ、なんだか硬すぎるわ」

「お詫びなんていらないのよ。私たちはお互い支え合う存在だもの」


 シャーリー聖女に続き、トッシーナ聖女、タチア聖女もぼくの緊張を解そうと優しい言葉をかけてくれる。

(思いやりのあるいい人たちなんだな……だからこそ正直に打ち明けよう)

 ぼくは、先輩聖女三人の顔と目をしっかり見て、意を決して話始める。


「みなさんに一週間もお休みをいただいていたのにも関わらず、今後もご迷惑をおかけしてしまう事案が生じましたのでご報告致します」


 相変わらず、硬い言い回しになってしまうが仕方がない! リアナ聖女の失業がかかっているんだから!

 ぼくは大きく息を吸い込み、今の現状を思い切って打ち明ける。

読んで下さり、ありがとうございます!

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