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42 殿下の手紙 【side ライガーン】

 アーノルド殿下が夢によく出てくるという土砂災害について、俺は部下にもう一度、ベルフォン王国内のロントクライン公爵領における土砂災害が最近起こっていなかったか、再度調査をするようにする指示を出す。

  それとは別に、ベルフォン王国のフォーレス医院宛ての手紙を届ける者も準備する。


「アーノルド殿下が手紙を書き終わって、中身を確認したら今日中に出立してもらおう」


 俺は、馬を用意して待機するように、何名かの騎士に伝令を出す。


「ロントクライン公爵領内で起こった土砂災害か……こないだの報告書には記載がなかったが、規模が小さかったから報告から漏れたのだろうか……。もしくは、けが人が無かったから報告があがってきていないのだろうか……」


 規模がどうであれ、道が塞がったり、二次災害も起こり得るから、よっぽど人が来ない山の中で発生しない限りは報告が上がってきていてもいいような気がするが……。


 アーノルド殿下の中にいる女性は土砂災害に巻き込まれて、その後、アーノルド殿下の中に入ってしまったのだろう。そうなるとすると、心配なのは、やはりその女性と入れ替わって、女性の中に入ってしまったと思われるアーノルド殿下の方だ。


 マヤゴン魔術騎士団長の観察眼をそのまま、鵜呑みにしても良いのかとも思うが、彼を始め歴代魔術騎士団長の任される人物には確固たる証拠を提示できなくても、ほとんどの事は彼らの言うことが正しかったと後から判明することが多い。

 と、あれば、やはりアーノルド殿下は彼女の身体の中にいて、入れ替わっていると思っておいた方が良いだろう。


「殿下は風魔法が使えるから、土砂災害に巻き込まれたとしてもご無事だとは思うが……」


 やはり、殿下ご本人のお顔を見るまでは、安心できない。

 今は女性のお顔だろうから見つけるのには時間がかかるだろう。


 何せ、殿下から音沙汰がないのか不可解だ。

 あとは、殿下の中の女性が手紙を出したいと言っていた、フォーレス医院だ。

 彼女の家族がそこにいるのか、彼女自身が働いていたのか……。恋人がそこにいる可能性もある。

 連絡を取りたい誰かがいるのだろう。


 そうこう考えている間に殿下からの使いが俺の執務室に呼びにやってくる。

 殿下が手紙を書き終わったという知らせを受ける。


「もう書けたのか。早いな。よし、殿下の執務室にすぐに行くと伝えてくれ」


 そういうと、俺は他に指示をし忘れた内容がないか確認してから、殿下の執務室に向かった。



 アーノルド殿下の執務室をノックすると、殿下自ら扉を開けて招き入れてくれる。


「入って入って!!」


 殿下は手招きをして、俺の腰を両手で押して部屋の中に招き入れる。

 その姿はとても可愛らしい。

 (こんな無邪気な動作を殿下は一度も見せたことなかったからな……。

 くぅ~中身が別人だとわかっているのに、たまらない。小さな手で押された腰の感触が忘れられない!!!)


 殿下の中身は女性だから、本来なら二人きりで男女が部屋に籠ってはいけないのだが……見た目は殿下なのだから、気にせずとも良いのだろう。


 (…もう何度も俺と彼女は二人きりになっているから、今更か……)

 そう思って、苦笑してしまう。


 (それはそうとそんなにも早く、手紙を届けたいのか……目が潤ませて、俺を見るんじゃない!)

 手紙を送れる喜びからか、目をキラキラさせて、書いた手紙を早速差し出してきた。


「これで大丈夫かなぁ?」


 手渡された内容に目を通す。

 イチゴ柄の便箋を選んだのか。そんなにも先程のティータイムのケーキがお気に召したのか。わかりやすいやつだ。


 一読して、一番最初に驚いたのは、綺麗なベルフォン王国語でツラツラと文章が書かれていたことだ。


 やはり、この女性はベルフォン王国から来たから、女性らしい書き慣れ親しんだ文字で文章が書けるのだろう。

 今、学習中のラーン帝国語とは比べ物にならないほど、美しい文字が並んでいた。


 (内容はと……)

 俺は手渡された文章の内容におかしな点がないか、または、新たな彼女の情報が得られないか確認する。


『フォーレス医院のシャーリー聖女とリアナ聖女は災害に巻き込まれていませんか? お元気でしょうか? Aより』

 そんな相手の状況を確認するだけの短い文章だった。


「殿下。返事はどうなさいますか? 殿下宛てだとかしこまってしまいますから、私宛にして返事をいただけるように届けるものに伝えておいても宜しいでしょうか?」

「うん! その方がいいかもしれないね! ありがとう」


 返事を書いてもらえそうなら、その場で返事を書いてもらってすぐに持ち帰ってくるように、出立する騎士に追加で任務をお願いすることにした。


 殿下が封蝋するのを確認すると、そのままベルフォン王国のフォーレス医院まで直接手紙を確実に届けてもらうように騎士に依頼した。

 ひとまず、今、俺ができることはこれだけだろうか。


 一仕事、終えた俺は執務室に戻る。


「そういえばフォーレス医院……。フォーレス医院……。どこかで聞いたことがある名前だなぁ。どこで目にしたんだったか……」

 俺は、その医院の名前を以前、聞いたことがあるような気がして思い出そうとするが、なかなか思い出せない。


「まぁ、そのうち思い出すか……」

 何かが、ひっかかる。頭の中で違和感を感じた。

 でも、どこでその言葉を耳にしたのか思い出すには至らなかった。


読んで下さり、ありがとうございます!

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