34 マヤゴン魔術騎士団長①
ライガーンにお願いしていた、風魔法の家庭教師の授業が今日から、再開される。
とは、言ってもリアナである私が受講するのは初めてなんだけれどね。
今まで回復魔法のことしか学んでいないからちょっと楽しみかも~。
でも、今までのアーノルド殿下と同じようにはできないだろうから、また剣術稽古の時のように先生にがっかりされるのは、間違いないわ。
私は訓練着に袖を通しながら、今日も教師となる先生の失望するお顔を拝むことになりそうねと、これから起こることについて予想をする。
いけない、いけない。
何も始まってもいないのに、最初からくじけていたらいけないわ! リアナ、しゃんとしなさい!
でも、アーノルド殿下と魔法特性が同じ物があったのは、本当にありがたいわ。
それなら、私の努力次第で、他の人にアーノルド殿下の中身が別人だって気がつかれにくいはずだもの。
一刻も早く、殿下が身につけていた技能レベルまで、できるようになっておきたい。
今日は、少し広くて、開けた広場のような訓練場で風魔法の訓練をするらしい。
空を遮るものがないから、今日のような少し肌寒い日は太陽の光がとても気持ちよく感じる。
私が訓練場まで場所に迷うと思われているのか、なぜかライガーンも訓練場までついてくる。
確かに、迷っていく可能性があるから、案内してもらえるのは助かるわ。
もしくは、そんなに、私がヘマをしてしまうのが心配なのかしら……。私は風魔法を洗濯物を乾かすくらいにしか使ったことがないから、今日は怪我したりはしないはずよ。
リアナとしての技量は本当に大したこともないはずだ。
「アーノルド殿下。お忘れかもしれませんので、再度、お伝え致しますが、今日の風魔法の指導はマヤゴン魔術騎士団長です。彼は、とても気さくな人物ですが、わきまえるということを知らない男です。魔術の腕は素晴らしいのですが、ご不快な思いなどされましたら、他の者に指導を変えますので、遠慮なくおっしゃってください」
ライガーンは本当に心配症なんだから。
今まで、アーノルド殿下を教えていたくらいだから、優秀な人物だと思うけど。
私が不快に感じるくらいなら、きっと私が入り込む前のアーノルド殿下が担当教官の変更をお願いしているはず。そうじゃないってことは、うまくやっていけるんじゃないかしら。
「そんなに気にしなくても大丈夫だよ。今まで教えてもらっていたんでしょ? それなら問題ないよ」
「殿下。ひとまず、嫌な思いをされましたら、すぐに私にご報告宜しくお願い致します」
「……うん。わかった」
(か・ほ・ご!! 過保護!!)
私は、心の中でそう叫びながらも、ライガーンの心配をありがたく受けとっておく。
常に味方でいてくれるライガーンがいたからこそ、少年だったアーノルド殿下は寂しさを紛らわせることができたのかもしれない。
私は、アーノルド殿下の生い立ちを思い出しながら、歩いて向かっていると、広場の中央に人が立っていることに気が付いた。
えんじ色の騎士服を着た、赤茶色の髪を一つにまとめた青年が風の大きな渦の中に立っている。下から巻き上げる風で髪も上に向かって巻き上がっている。
(まるで、竜巻の中にいるみたいね……)
「彼が、マヤゴン魔術騎士団長です」
ライガーンが声を発するのを合図に、一瞬でマヤゴン魔術騎士団長の纏っていた風が消え、その人物の横顔が露わになったかと思うと、彼は私たち二人の方に身体を向けた。
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