32 アーノルド殿下の生い立ち
パンハー皇子と剣術稽古を終えて、ライガーンに左手首に包帯をしてもらった日の午後。
私は、ライガーンの執務室を訪れた。
「ライガーン殿……。ちょっと教えて欲しいことがあるんだけれど、今、大丈夫かなぁ」
私は、重厚な木製の扉を開けてゆっくりと開けて、顔をひょこっと覗かせた。
彼が一日中、忙しいのは知っている。
でも、先ほどのパンハー皇子の存在を把握していなかったことは、自分がアーノルド殿下として生きていく上で必要な情報だったのに、今まで一度も確認してこなかった自分自身のミスだと思ってしまった。
「問題ありませんよ、殿下。どうぞ、こちらにおかけください。それと、どうぞライガーンとお呼び下さい」
ライガーンは、私が執務室にやってくると予想していたのか、たまたま休憩をしようとしていたのか、部屋の隅の丸テーブルに二人分のティーセットが準備してあるところまで行き、紅茶を入れてくれる。
「ライガーンの回復魔法は、完璧だね。もう全然痛くないよ。私にも使えたら……」
リアナの私は、聖女というのに回復魔法が使えなくなっていることが少し残念に感じている。自分で自分の痛みすら取れなくなってしまった。
「……。殿下は、先日までは風魔法を極めていらっしゃいましたからねぇ……」
それも忘れちゃったんですか?とでも言いたげな表情で、ライガーンは私を見る。
「え? そうなの? 風魔法が使えるの??? そうなのか。それは良いことを聞いたなぁ」
むふふ。アーノルド殿下は風魔法が使えるのね。私も風魔法の魔法特性を持っていることは知っているわ。
孤児院にいる時に、洗濯物を乾かす時に便利だったもの。それくらいしか使ったことないけれど、アーノルドと同じ魔法特性ならすぐに使えるのかもしれない。
早速試してみないといけないわね! 私は、回復魔法以外で使える魔法があるなら、使えるようになりたい。
「あのさ……風魔法の使い方も、もう一度?教えて欲しいんだけど、教師の手配してもらっていいかな」
「もちろんです。頭を打たれていてから、風魔法の授業もお休みにしておりましたが、こちらもすぐに再開の手配致しましょう」
よし、アーノルド殿下ができていたことは、少しずつできるようになっておかないとね。
まだ、殿下の中身が女性だとばれていないだろうけど、ばれないようにも最大限、努力しなくちゃ。
そう話しながら、私は剣術稽古でのことを思い出していた。
「覚えていないんだけど……さっきのはパンハー第二皇子殿下なんでしょ?」
私は、ライガーンが咄嗟に耳打ちして教えてくれた単語を思い出す。
「ということは、第一皇子もいるってことでしょ? みんな仲良くは……ないのかな? もうちょっと家族のことを聞いて、思い出しておけばよかったと思ってさ……。教えてくれないかな? なんで、あんなに仲が悪そうなんだろう」
そこまで、言うとライガーンは手に持っていた、カップをテーブルに置いて、アーノルド殿下の生い立ちを話を始めた。
それは、とても豊かな城の中で生きてきているのに、孤児院で育った私と変わらないくらい、孤独で寂しい内容だった。
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ついにアーノルド殿下の家族構成が明かされますね!




