30 失業の危機
ぼくは、1週間いただいた休暇で毎日、魔法の訓練を続けている。
(本当は、身体を休めるためにくれた休暇だがすまない。これもリアナの為なのだ)
毎日、少しずつかける風魔法の負荷を大きくしていっている。
使われていなかっただけで、リアナの身体は風魔法に適していた。
(ぼくの得意な風魔法が使えるなんて、ありがたいな)
これで、もしアーノルドだと誰かに気づかれても殺傷能力は少ないものの 足止めができるくらいの風のナイフは飛ばせるようになった。
本当のアーノルドの身体であれば、城の屋根に浮かび上がるほどの風を足にまとわせることができた。
しかし、訓練を始めたばかりのリアナは、足に風をまとわせてほんの僅かに浮かび上がる程度しかできない。
(まぁ、浮かぶ高さは低いけれど、これで訓練を積めば浮遊した状態で走るよりも早く移動ができるようになる)
あとは、医院の仕事が終わってからや休みの日に毎日訓練するしかない。
剣は手持ちがないので、丘で拾った太い木の枝に風魔法でやすりをかけて木刀としている。
ちょっと聖女が木刀を持って、うろちょろするのは異様な光景だと思うから、作った木刀は丘の木の洞に隠している。
(丘に来ないと素振りができないのは、残念だけど……)
木刀で素振りを500回した次の日、リアナの腕はものすごい筋肉痛に襲われた。
(自分のアーノルドとしてできていたことも、器となるリアナの筋肉が足りていないから、無茶しすぎたようだ……。ごめんよ、リアナ)
反省すべき点は毎日、見つかるけれど、身を守る術はできるだけ整えておきたい。
明日からは、1週間の休暇が終わり医院で再び働き始めるのだが、一つ解決できていない大きな問題が残っていた。
それは、聖女だというのに回復魔法が使えないということだ!!
(ついに仕事復帰が明日に迫ってきたな。どうやってごまかそう)
リアナの腕が筋肉痛になった時に、聖女だからリアナの身体に回復魔法を使おうとしたのだ。
見習い期間を終了したEランク聖女だと聞いていたのに、痛みを取る事もできない。
(できると思っていたのに、回復魔法が使えないなんて!! ヤバい、ヤバすぎる)
リアナが聖女として職を失うことがないようにしてあげたいのに、全く回復魔法が使えないのだ。
(あれか……。アーノルドが使える魔法特性とリアナが使える魔法特性が一致しているものしか使えないということか……)
リアナが2つも魔法特性を持っていること自体も貴重なのだが、回復魔法が使えないと明日からの職場復帰に差し支えが出てしまう。
どうしたものか……。
ぼく自身は、皇族だからいくつか魔法特性は持っている。
もともと、魔法特性が多く魔力が強い者が高位貴族となり帝国を守ってきたのだから、皇族は皆、かなり多くの魔法が使える。
それは、隣国との戦争にも役に立つし、力を見せることで高い地位を確立して、誇示してきたという歴史がある。
ただ、皇族の魔法特性は敵国にばれないように秘匿とされているし、公にすることはできない。
そもそも、魔法特性が他者にばれないように、魔法に制限して使えない状態にしている。
身体が育っていないのに、魔力を解放してしまうと制御できずに暴走してしまうからだ。
だから、今のアーノルドの身体は魔法特性を部分的にしか解放していないのだ。
う~ん。困ったな。
リアナが失業しないようにだけしないと!!
ぼくは、明日からの医院での仕事をどう切り抜けるか、頭を捻り続けた。




