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29 丘の上で

 ぼくは、手紙を出した後、人があまり来ないと思われる場所を探す。


(う~ん。あの見えている丘なら木もあるし、人目にはつきにくいかなぁ)


 そう思って、大通りから小道にそれて、木々の茂っている丘を目指す。


 ひとまず、風魔法がリアナの身体でどこまで使えるのかは、知っておきたいよね。

 後は、聖女が帯剣していたらおかしいけど、短刀くらいならドレスの下に仕込んでおいても目立たないか。

 投げる暗器もスカートなら隠せるなぁ。

 あ、でも短刀にしても暗器にしてもリアナの蓄えからは、さすがに高価だからすぐに購入はできない。

 ……となると、ぼくが聖女として稼いだお金で購入するなら……問題ないか。


 やるべきことが次々と頭に浮かぶ。


 リアナの身体で微弱ながら風魔法は使えるのは、土砂崩れの時に確認済みだから、その精度を上げていくのが一番いいのかもしれない。


 丘に着いたら、木々で囲まれているけれど、少し広場のように開けた空間がないか探す。


「お! ここ、いいんじゃない? 木の影になるから、太陽の光は入ってこないけど」


 ぼくは、雑草がひざ丈よりも高い位置に伸びていて、人が入った痕跡が見られない場所を見つけた。


「じゃあ、まずが右手の手のひらの上で風を起こしてみよう」


 ぼくが三歳の時に初めて訓練したことを思い出しながら、風を起こしてみる。


「う~ん。リアナは風魔法が使えるけれどほとんど使っていなかったみたいだな。魔力はたくさんありそうなのに、出力した時の気の通り道が整っていない感じがあるなぁ」


 手のひらを上に向けて、そよそよと小さな渦巻く風のボールを作っていく。

 きっと、聖女として回復魔法を習得する方に注力していたから、風魔法は使っていなかったのだろう。


「風魔法を使いこなせたら、身体も浮かせられるし、攻撃魔法にも使えるから防犯対策にもお勧めなんだけどなぁ……」


 ぼくは、独り言を言いながら、手のひらの渦巻く風のボールを徐々に大きくしていく。

 ゆっくり、ゆっくりと時間をかけて大きくしていく。

 慌ててはいけない。リアナの身体に風魔法を馴染ませていく必要がある。


 額から汗が流れ出たところで、右手の手のひらの上の渦巻き風ボールを上に放り投げて、真上の木の枝に当てて霧散させる。

 枝が急に揺れて、それに驚いた鳥が何羽か飛び立って行く。


「よし、少し休憩したら、同じように左手もやっておくか」


 ぼくは丘に来る道中の屋台で買った、赤くてツヤツヤしたりんごを丸かじりする。


「あ~、幸せ~。物語の冒険者みたいにりんごをそのまま服の袖で拭いてから、丸かじりするのに憧れていたんだよね!」


 皇城に戻ったら、絶対お行儀が悪いと言われて、人前でできそうもない。

 常に護衛もいるし人目があるから、何となくやってはいけないような気がしていた。


 リアナ聖女がりんごをほおばっても、それはそれで可愛らしい姿になっているんじゃないだろうか。


(窓か鏡があれば、君が自然の中で食べている姿も見られたのにな)


 ささいな楽しみを見つけて、やってみたかったことをやってみよう。


 りんごを食べ終えたぼくは、リアナと入れ替わったことに感謝して、再び左手も右手と同じように渦巻き風ボールを作る訓練に勤しんだ。

読んで下さり、ありがとうございます!

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