28 手紙を送ろう
シャワーを浴びて、綺麗になったぼくはリアナの部屋で、抵抗がないわけではないが仕方がないから
ドレスに袖を通す。
(チェストの中には質素なドレスしかないのだから、彼女の装いを身に着けておくのが一番良いだろう)
誰も、リアナの中身が一国の皇子だなんて、気が付かないだろう。
でも、何があるかわからない。
中身がアーノルドだとわかって暗殺にくる者だっていないとは、言い切れない。
(用心はしておかないとな……)
いくら、リアナの身体を借りているとはいえ、おかしな行動や言動をとれば怪しまれないわけではないから、他国ではあるが民の生活を楽しみながら警戒を怠らないように気を付ける。
(よし!! まず最初にすることは……手紙だな!)
アーノルドの中身がどこに行ったのか、きっとライガーンなら中身の違いに気が付いて、捜してくれているはずだ。
まずぼくの無事と現在地を手紙に書くことにしよう。
(ラーン帝国まで遠いけれど、皇城にいるライガーン宛に送れば、筆跡でぼくだと気が付いて信じてくれるだろう)
ぼくは、鏡の中のリアナに一言断りを入れてから、彼女の机の引き出しをそっと開ける。
手紙と書くものを拝借して、文をしたためる。
聖女からとはいえ、他国の皇城に手紙を出すのだから、途中検閲で中身を検めるだろう。
できるだけ、不自然な文章にならないようにしないと、リアナが密偵と疑われてもいけない。
近い距離であれば、ぼく自身の風魔法で数刻程度の範囲であれば、風に乗って手紙を送ることができる。
鍛錬といいつつ、遊び半分で手紙を書いて、風魔法で正しく相手のところまで届くのか何度か挑戦したことがある。
そういえば、池に落ちたり、他の家に届いたり、失敗もしたっけ。
昔の失敗に苦笑しながら、ペンを握る。
でも、さすがにベルフォン王国から山脈を越えて、さらにグライカ帝国を通り越して、ラーン帝国まで風魔法で手紙を飛ばすのは不可能だ。
やってみたことはないが、大陸の中で友好関係にはない上に隣合っているグライカ帝国とは相性が良くない。
空中に飛んでいるものは、撃ち落されてしまう可能性の方が高い。
グライカ帝国を避けて、北の方を大回りしても・・・距離が遠すぎて無理だな。
「そうだ。リアナの蓄えを減らすことはできないから、しょっちゅう手紙はかけない旨も書いておこう!」
ついつい、ライガーンとは報告や連絡で、毎日のようにやり取りをしていたから、毎日近況を報告したくてたまらないが
切手代もリアナが負担するのだから、急を要する時や、ぼくが場所を移動する時だけにした方が良さそうだ。
ぼくは、ひとまずライガーンに手紙を送って、その返事が来るまでフォーレス医院に留まることにした。
下手にぼくが動き回ると、迎えにきた者と入れ違いになるかもしれない。
しかも、姿がリアナだから簡単に合流できるとは考えない方が良いだろう。
手紙を書き終えた後、郵送の手続きをしに宿舎から外に出る。
ベルフォン王国の今いる場所は、雪が舞い落ちるラーン帝国の皇城よりも暖かいようだ。
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