25 入れ替わり
次の日。
シャーリー聖女は朝食を食べた後、早速、ぼくに再び回復魔法をかけてくれる。
「もう、これで一安心ですわ。リアナが無事で本当に良かったわ」
「ありがとうございます」
「ちょっと、リアナの話し方がおかしくなってしまったのが、気になるけれど・・・」
「案じなくていい。恐らく頭をぶつけたせいだから・・ね」
ついつい、ライガーンに話す時のような口調になってしまう。
時々、語尾に「ね」とか「わ」とかつけておけば、ごまかせるだろう。
多分だけど。
「リアナの調子が良さそうなら、医院に戻ろうと思っているんだけど、大丈夫よね?」
「あぁ。構わない・・わ」
そう、今日の予定を立てると、シャーリー聖女とぼくは宿屋の外に出る。
(ん?)
ぼくは何か違和感を感じる。いや・・リアナの身体にいること自体、おかしいのだが、そうじゃなくて・・・。
(!? 文字が違う!)
昨日は、負傷したことで街並みを見る余裕なんて、全くなく、連れられるがままに宿屋に来ただけだった。
今日は、骨折が完治したことで、景色を楽しむ気持ちが生まれたのだ。
ぼくは、慌てて街並みに綺麗に浮かび上がる店の看板を眺める。
(・・・全て、ベルフォン王国語じゃないか。すると、ここはベルフォン王国だということか!!)
ぼくは皇城の中で、この大陸の各国の語学を学んでいる。各国の歴史などはまだ学んでいないが、各国の貴人、王族などとは挨拶ができる程度にだけ学習をしていた。
(こんなにも早く、学んだことが活かされるとは思っていなかったが)
この身体の持ち主のリアナはベルフォン王国に住んでいて、土砂崩れに巻き込まれたということになるな。
ベルフォン王国からラーン帝国までには、間に山脈もありグライカ帝国もある。
ライガーンが、私を迎えにくるとは考えないほうが良いだろう。
自力でラーン帝国を目指すことになりそうだ。
昨晩は、なかなか寝付けずに、そのおかげでいろいろ考えることができた。
そう、いろいろだ。女性と同室なのだから!
目が覚めて、アーノルドの身体になっていたら大事になると思ったから、たびたび起きて上がっては窓に映るリアナの顔を確認してしまった。
万が一、アーノルドが映っていたら、醜聞が悪いので、何もなかったとしてもシャーリー聖女との婚姻問題に発展してしまうからだ。
今朝も、昨晩と同じリアナの顔が鏡に映し出された時は・・・、安心してしまった。
無理やり好きでもない相手と婚姻するなんて、助けてもらったシャーリー聖女にしたくなかったからだ。
それはそうと、昨晩、ぼくはこれは魔術による現象かもしれないと予想を立てた。
なぜなら、ぼくは居室で寝ていただけなのだから、死んで転生したわけでもない。
ぼくにはアーノルドの身体が見えているのだから、リアナの身に何かあって、その結果、なぜかぼくと身体が入れ替わってしまった・・・そういう、仮説を立てている。
(魔術によって、人を傀儡の状態にしたり、一国が滅びたこともある・・・そんな本を読んだことがある)
人を傀儡にできるのだから、人の魂を入れ替えることもできるのではないだろうか。
そう結論づけた。
(でも、でも、でも・・・こんなに自由に街中を歩き回れるし、国は違えど民の生活を堪能できるなんて・・・)
入れ替わってしまったであろう、リアナには申し訳ないが・・・。
今まで味わったことの解放感で、ぼくは最高に幸せだ!!!!!
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