23 一晩をともに……
シャーリー聖女は、ぼくの骨折を治してくれたので、痛みは随分と楽になった。
ただ、ライガーンと違い、魔力も少ないのだろう。骨折を治しはしたが、完全にくっついた状態ではなく、まだひびのままの部分もあるとのことで、明日、再度シャーリー聖女に回復魔法をかけてもらうことになった。
彼女も魔力を使いすぎたのか、ぐったりしていて顔色が良くない。
今日はすぐ近くの宿屋に泊まろうということになり、騎士団の二人が宿屋まで送り届けてくれることになった。
(そういえば、騎士団の制服も初めて見る制服だな。彼らは、騎士団ではなくて、自警団なのだろうか)
この時、ぼくは救出されて、治療を受けてから初めて声を発した。
「そなたたちは……」
(何だ。今の声は!?)
明らかに、自分の身体の中から女性の声が出てきて、気味が悪くなる。
(よし、聞き間違いかもしれない。もう一度、ゆっくり声を出してみよう)
「そ、そなた……」
(ちっがーーーう!! こんな声が出したいのではない!!)
可愛い声といえば、透き通るような若い女性の声なのだが、こんな声を出したいわけではない!!
ひょっとして、このシャーリー聖女は骨折を治した時に、ぼくの声帯にも何らかの魔法をかけたのではないか!?
一瞬、シャーリー聖女の仕業にしようと、悪しき考えが頭をよぎったが、あんなに号泣しながら治療してくれた彼女の腕を疑ってはいけない!!
彼女を信じるだ!
(はっ! 成長の過程で伴うという、アレか? 声変わりという第二次性徴の現象なのではないだろうか。きっと、そうだ!)
ひとまず、今は声さえ出せれば良しとするべきだ。救命した者たちに、御礼を言わないなんて皇族の恥ではないか。
僕は今は声音のことは後回しにして、騎士団とシャーリー聖女に助けてくれたことの礼を述べた。
「そなたたちのおかげで、命拾いをした。感謝している」
ぼくは三人に向けて、言葉を口にした。
「怪我もだいぶ良くなって良かったですね。リアナ聖女」
「我々はもう戻りますが、今日の土砂災害の件は報告しておきます」
(彼らはなぜ、ぼくを見てリアナ聖女だと呼ぶのだろう?)
「リアナ、どうしたの? いつもと口調が違うわね。頭を打ったからかしら。どうしましょう」
シャーリー聖女はぼくの口調を、ぼくは自分の声帯がおかしいと、お互い混乱しながらも、近くの宿屋まで騎士団に送り届けてもらった。
(ぼくは頭を打ったから、記憶か言動に問題が出てきているのか? そうなのか??)
よく現状がどういう状況なのかわからないまま、宿屋の木製の扉を開ける。
女性が優先なのだから、ぼくは扉を押さえたまま、右手でシャーリー聖女が先に入るように促す。
シャーリー聖女は、少し不思議な表情をして先に扉をくぐる。
(今の動作は、スムーズでは無かったのか? ぼくもまだまだ淑女に対するマナーを学ぶ必要がありそうだ)
シャーリー聖女が受付を済ませて、2階を指差す。
(あぁ、部屋は2階か)
「では、シャーリー聖女。ありがとうございます。また、明日、宜しくお願いします」
ぼくは、シャーリー聖女に再び、御礼を述べると彼女はキョトンとした、表情で見つめ返す。
「何を言っているの? 私もあなたと同じ部屋に泊まるに決まっているじゃない」
「………」
(何を言っているんだ?! 未婚の男女が同じ部屋で寝てはいけないに決まっているだろう!)
もし、ぼくが彼女と二人っきりで寝る事になれば、責任を問われる。
何もなくてもだ!!
「あなたは、まだ治療中の患者なのよ。今晩も様子を見たほうがいいから、私が傍にいたほうがいいわ」
彼女が言っていることは、正しい。しかし、男として、皇族としての責任問題が問われるのは目に見えている。
どうやって、断ろうか考えていた時に、宿の窓に視線が行く。
外の暗い街並みよりも、明るい室内が反射して、ぼくたち二人の姿が映っている。
な、なんだ。あれは……おかしな現象が起きている!!!
夜の窓ガラスに、映し出されたぼくたちは、二人とも女性の姿をしていた!!!!!
ぼく自身の身に何かが起こったことは間違いない。
でも、女性同士なら同室で一晩共にしても、責任問題なんて問われるはずもない!!!
じゃあ、まぁ……いいか。
ここはシャーリー聖女の言葉に甘えて、今晩は傍にいてもらおう。
夜が明けて、目が覚めた時に男のぼくに戻っていないことを願うしかない!
眠れるかどうかは知らんけど!!
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アーノルド殿下、眠れるのでしょうか(´艸`*)




