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21 アーノルドの魂の行方

 ぼくは、アーノルド・スラサク・ラーン、10歳。

 ラーン帝国の皇子だ。


 いつものように、寝室で身体を休めていたら、予兆もなく身体に激痛が走って目を開ける。

 夜が明けていなかったはずなのに、突然の陽の光に目が慣れておらず、眩しすぎて目を開けることもままならない。


 不意打ちを狙った急な襲撃か!? 


 働かない頭を動かすが、今、理解できているのは骨が何本か折れていることと、何かが身体にぶつかり、それに押し出されて、ぼくの身体が宙を舞っている最中ということだけだ。

 ぼくは、現状がよくわからないが、これは生死にかかわる緊急事態だということはわかる。


 空中に放り出されたのだから、何とか受け身をとらなければ。


 目を細めながら天地を確認すると、視界にものすごい勢いで流れてくる土砂と岩が目に入る。


 あれがぶつかってきたのか? 道理で痛いはずだ。


 なぜ、こんな状況に?と考えるよりも先に、迫りくる眼下の地面をとらえて、慌てて使い慣れた風魔法で衝撃を防ごうとする。


 シュンッ


 ぼくの風魔法はとても小さな音を立てる。

 予想していた音よりも遥かに小さく、想像と全く違う弱々しい風が手の平から出てきて驚く。


(なんだ!? いつものように出力できないぞ!!)


 身を守るために、小さい頃から血の滲むような鍛錬を積み重ねている風魔法が、自分の思い描いたように操作できずに、焦りを感じる。


(これでは威力が弱すぎる!!!)


 そう思った時。

 ほんの少しだけ衝撃を緩和することができたものの、身体が地面にたたきつけられ、再び痛みを感じたのと同時に、流れ出る土砂が無情にも、身体の上を覆いつくしていく。


 鍛錬の成果なのか、迫りくるの衝撃に備える為、自分の身体の周りに風魔法でドーム型の空気層を作っていたのが良かった。

 土砂が直接ぼくを押しつぶすことはないだろう。

 でも、この弱い威力の状態でどこまでこの小さな空間が維持できるか・・・。


 土砂崩れが止まったのか、轟音も地響きも感じなくなった。


(さて、どうしたものか・・・)


 いつも通りの魔力なら、上に土砂がのっていようと、風魔法でカッターのように土を切り裂いて、足底から風を操って外に飛び出して脱出できるのだが、先ほどの極小風魔法なら、この空気層ドームを維持できずにそのまま、押しつぶされてしまいそうだ。


 声で助けを呼ぼうにも、肋骨も折れているようで、痛みで声を出すのもためらう。


(仕方がない・・・。このまま救助を待つか。誰か土砂に埋まる私の姿を目撃していてくれたら、良いのだがな・・・)


 そのまま、痛みを抱えたまま、ぼくは小さい呼吸を繰り返し、目を閉じた。



 ■■■


「騎士様!! 早く! こちらです!!」


 遠くから、女性の泣きそうな声が聞こえる。

 ぼくを心配して涙を流してくれる女性が母上以外にもいたのだろうか。

 誰かわからないが、そなたがぼくを見つけてくれたおかげで、何とか土砂に圧迫されずに済みそうだ。


 くぐもった声と、パラパラと土を取り除いていく音が微かに聞こえる。

 それが、やがて近くになり、すぐそこに人がいる感覚がはっきりとわかった。


 そう思っている間に、空気層ドームの上の土砂を素手で掻き分けている女性と目が合う。

 ぼくが、まだ息をしているとわかったからか、大粒の涙をさらに流した女性と騎士2人の三人が救助する手を早めてくれる。


 三人共、泥だらけになるのも厭わず、ぼくを土砂の中から救出してくれた。


(あ~、良かった。助かったのだな)


 三人に御礼を述べたかったが、痛みで声を発することもできない。

 彼らは手際よく、ぼくを土砂崩れが再び起きない、安全な場所まで運んでくれたのだった。




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