14 アーノルド殿下とリアナの行方
美味しく朝食をいただいた私は、どうしてこの現象が起きたのか机にあった紙に書き出してみる。
えっと、まずリアナとしての記憶はロントクライン公爵領の土砂崩れが最後になっている。私はあの時、死んだのかしら。よし、死んだと仮定して、今の現状を考えてみる。
「私が死んだとしたなら、これは『転生』という現象かもしれないわね」
私は孤児院の時に、足を運んでいた教会で『人は転生することがある』という話を耳にしていた。だから、転生したのかもしれない。じゃあ、昨日までこの身体の中にいた、アーノルド殿下の魂はどうなったのかしら。私が転生者として、入り込んでしまったために魂が消滅しまっているとしたら、本当に申し訳ないことをしてしまった。彼の代わりに生きていかないと謝罪のしようがない。
「ひょっとして、この身体の中でアーノルド殿下の意識が眠っているだけの可能性もあるんじゃないかしら?」
そうつぶやくと、心の中で『アーノルド殿下~!いらっしゃいますか~?』と叫んでみる……。
反応は、無い! うん、きっと深い眠りについているのか、この身体の中にはいないのかもしれない。あとは、どんな可能性があるかしら。アーノルド殿下は実は多重人格者で、その人格のうちの一つが、リアナの魂ということも考えられるわよね。あとは……
「は!リアナの身体と入れ替わっているとか?!」
頼む~、それだけは勘弁願いたい。同じようにあちらも上半身裸になって鏡の前に立っていないことを切に願う。少年にこのお姉さんの身体は刺激的すぎるに違いない。この世から、鏡よ消えてしまえ! 心の中で悪魔のような声で叫んだから、きっとリアナ周辺の鏡は存在しないはずだ。多分だけど。
「でも、私は確実に土砂に吹き飛ばされたから、ひょっとしたらまだ土砂の中に埋まっている状態でアーノルド殿下と入れ替わったってことは、無いよね……」
恐ろしい想像をしてみる。いきなり、目が覚めて土砂の中にいたら、私だったらパニックになっているだろう。しかも土砂に吹き飛ばされた時に強い痛みを感じたのは記憶にあるから、怪我をしているはずだ。この可能性は、低いと嬉しいのだけど、ひょっとしてまだ土砂の中から助けを求めて叫んでいる可能性もあるんじゃない?! 早く助け出さないと、リアナ本体が今は生きているけど、死んでしまえばひょっとしたら、今の魂だけのような私も消えてしまうかもしれない……。まぁ、本体が死んでしまっているのに、魂だけが生きているのも幽霊と一緒だから、一緒にあの世に行けるなら消滅してしまうのが一番いいのかもしれないのけどね!
「よし、ひとまずリアナの身体を探すことから始めた方が良さそうね。生きているのか死んでいるのかで、今の現状が把握できるのかもしれないわ!」
勢いよく、椅子から立ち上がったものの、味方がいないこの状況でどうしたものかと考える。殿下という立場なら、簡単に外出ができるとは思えない。どうやって、情報収集をしようかしら。転生してアーノルド殿下として生まれ変わっている可能性も捨てきれなかったので、夜中に私はベットから転がり落ちて、頭を強打したため、記憶があいまいだという設定にした。
よし。これが一番、怪しまれないでしょうし、何か間違った発言をしていても、記憶が無いせいだと言い切ってしまえばいいと逃げ道を用意しておく。だって、アーノルド殿下としての記憶が全くないのだから、あながち嘘は言っていないと思う。
そうと決まったなら、先ほどの美丈夫ライガーン様を呼んで記憶がなくなったと伝えよう。次期宰相なのだから、悪いようにはしないだろうし、侍女の話によるならば知的で有能らしいから、良い方向に自然と導いてくれるだろう。たまには、他力本願も大切だ。
私は、自立して自由になるのよ~と心の中で叫んでいた、過去の自分の台詞を忘れ、ある程度はできる人に任せてお願いしようという方法転換を行った。
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