12 身体確認
うまく一人きりの時間を確保した私は、寝室の中で混乱している頭を整理することにした。
まずは・・・私の身体から確認しましょう!
私は、ゆっくりと今着ている上半身の衣類のボタンを順番にはずしていく。
(うむ。間違いなく私の胸よね。手触りは・・・いつもの私の身体を触っている感覚がある)
頭に手を当てると、髪も長いままですみれ色のゆるやかな癖のある毛先は胸下まであるのが確認できる。
もちろん、毛先に触れると手にふわふわとした感触があるのがわかる。
それから、この上半身裸の状態で、先ほどの鏡の前にゆ~くりゆ~くり端から映り込むように近づいていく。
(いるのよね。いるのよね。鏡には先ほど映ったアーノルド殿下が・・)
ゆっくり首をかしげて、端の方からこっそり顔を鏡に映してみる。
(いたー! この男の子!)
次に上半身をゆっくり鏡に映してみる。
(あちゃ~。顔が殿下なら上半身もやっぱり殿下だった!!)
きっと、皇族なのだからおいそれと肌を見せてはいけないに違いない。
鏡に映った男の子を確認するとすぐに、鏡から離れて上半身を見ないように努めた。
(は~。上半身が彼ならば、下半身も彼のものなのだろう)
踏み込んでは決していけない領域に来てしまったので、そこは確認をしなかった。
ありがたいのは、鏡に映さない限り、私は自分の身体を目視できる。
でも、先ほどの男性のように私以外の人にはアーノルド殿下にしか見えていないため、衣類は彼の物を拝借して着ないと、間違ってドレスを着ようものならアーノルド殿下が女装しているように他者の目に映り込んでしまうのだろう。
まぁ、この部屋にあるのは殿下の服しかないようだから、ドレスを間違って着ることなんてないでしょうけれどね・・・。
まぁ、お風呂なども鏡に映しこまなければ、自分の身体を洗っている感覚なので何とかなるだろう。
そこまで、確認できると自分の置かれている状況が少しわかってきて安心したのか、お腹がくぅ~と鳴る。
よし。腹は減っては・・と言うものね。ひとまず、何か食べましょう。
私のためにも、本体である殿下のお身体のためにも!!
そう思い、侍従を呼んで、寝室で食事がしたい旨を伝えるとすぐに侍女2人が食事を運んできてくれる。
「殿下。こちらにご用意致しますので、しばらくお待ち下さい」
リアナと同じくらいの女性と20代と思われる女性二人がてきぱきと寝室に置かれていた、丸いテーブルに朝食の準備をしてくれる。
(う~ん。先ほどの美丈夫の名前がわからないから、知っておきたいのだけれど、本人に名前を聞くわけにはいかないしどうしよう。
さりげなく、この侍女2人に話を振って聞き出してみようかな)
そう悩んでいるうちにどんどん食事が並べられていく。
よし、チャンスは逃すちゃいけないわね。私は、今がその時だと感じて、声をかけてみた。
「さっき、私を起こしに来てくれたさ・・えっと銀髪の・・・」
「あぁ、ライガーン様のことですか?」
(ほうほう、ライガーンというお名前なのですね)
「うん。そのライガーンだけど、いつもあんなに爽やかに笑っていたら、女性に人気なんじゃない?」
(役職とか殿下との関係性を聞きたいけど、ひとまず普通の会話っぽくしてみよう)
「そうですわね! 知的で次期宰相だというだけのことはあって、それでいて配慮もできる方ですので、女性に人気がありますね」
(やっぱり、あれだけの美しい顔立ちをしていたから、人気があるお方なのね。しかも次期宰相というキーワードまで聞き出せたわ。ありがとう!)
そう年上と見られる侍女が話すと、リアナと同じくらいの侍女がすかさず言葉を重ねる。
「そうは、おっしゃいますが、アーノルド殿下もなかなかの人気ですのよ」
「そうなのか。教えてくれてありがとう!」
何となく、他人事のように返事をしてしまったが、どうやらアーノルド殿下も人気はあるらしい。良かったね、黒髪少年。
それだけを確認すると、侍従も侍女も下がってもらい、一人きりで食事をしながら次にするべきことを考える。
侍従たちを下がらせたのは、たくさん並べられたカトラリーを見て、食事のマナーに自信が無くなったからだった。
ひとまず、食事のマナーを最初に覚えよう!そうすれば、三度の食事にビクビクして過ごすことはなくなるからね!




