11 アーノルド殿下・・ではない
落ち着け、私!!! 深呼吸よ!
「スー、ハー」
これで脳に酸素が行き届いたはず。
今は、この状況を打破する為に精一杯乗り切るしかない。どうやら、私がアーノルド殿下とやららしい・・・ということは鏡に映る自分を見て、思い至る。
この若い美丈夫に怪しまれないように、アーノルド殿下と思われる人になりきろう! とここまでの考えに達するまで3秒。
ひとまず、挨拶でごまかしてみよう。
「おはようございます!」
そして、最高のスマイル。
(決まったわ。これで殿下っぽくなったんじゃないかしら)
私は、先ほど鏡に映った黒髪の少年をイメージして、少し子供っぽく元気に挨拶をしてみる。目覚めてから、初めて、きちんとした言葉を発してみると、確かに自分自身ではない声が、声帯から発せられて少し自分でもびっくりする。まだ声変わりをする前の男の子の声だった。
一瞬、目の前の男性が大きく目を見開いた気もするけど、違うかもしれない。違うと今は思いたい。
「おはようございます、殿下。今朝はかくれんぼをなさっていたのですか?」
ふむふむ。この質問から読み取るに、このアーノルド殿下とやらはいたずらっ子な方なのかもしれない。時々、こういう遊びをしているのか? なら、答えは決まっている。
「うん。かくれんぼというより隠密の真似かな?」
先ほどの鏡に映った黒髪少年を思い浮かべて、少しカッコいい呼び方に変えて首をかしげながら、この男性を見上げてみた。
「隠密・・・そうなのですね。とても楽しい時間になったようで良かったです。ところでお着替えがお済みでないなら、私がお手伝いいたしますがどうなさいますか?」
(ん? かくれんぼが隠密の真似だったというところまでは、スムーズに会話を持っていけたわよね。お着替え・・・。殿下というのだったら、一人で着替えはしないものかしら・・。でも、見ず知らずの人前で服を着替えるのは、中身が16歳の私には、抵抗がある。よし丁重にお断りしよう。)
「気持ちはありがたいけれど、自分で身支度はできるよ」
少し、恥ずかしくて身体がほてってしまったけど、きちんと伝わっただろう。頭を整理したいから、もう少し一人になりたいけれど、何て言えばいいかしら。
「・・それと、今朝は気分が優れないから、もう少し横になっていてもいいかな」
背の高い銀髪を後ろでに一つにくくった男性を見上げながら、一人になる時間が欲しくて提案してみる。
「かしこまりました。侍医をお呼びいたしますか?」
いやいやいや。気分が優れないだけで、医者なんて呼ばないで欲しい。なんて虚弱体質なんだ。子供は逞しく育てないといけないだろう。しかも、私自身、このアーノルド殿下の身体と自分がどうなっているのか解明できていないのに、医者に診てもらうなんて恐ろしいことはしたくない。
「いや。必要ないよ。ありがとう」
この男性の名前がわからないから、ひとまずお礼だけ述べて退室してもらった。
「は~」
深いため息をつきながら、ひとまずアーノルド殿下だとばれずにやり過ごせたことに安堵した。
慌てふためくリアナが私は好きです。
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