118 元魔術師団長との関係
「アーノルド殿下のご質問に関しての答えなら、時空の移動はできる」
ロン元魔術騎士団長は、当たり前だとでも答えるかのような軽い口調だった。
「じゃあ、ロン殿のせいで……アーノルド殿下とリアナは入れ替わったってことなのか?」
ライガーンも今まで、散々振舞わされたというのに姿を現さなかっただけでなく、入れ替わりの理由を知っていそうな人物が目の前にいることに腹を立てているようだ。
「ライガーン殿には、以前、きちんと返事はしたはずだが。アーノルド殿下の魂の入れ替わりの件に関して、問題はないと」
「確かに、そのような内容の返事は受け取ったが、ロン元魔術騎士団長が何かをしたからこの入れ替わりが起きたのか?」
「その答えは、多少の原因は合っているが、全て私一人がやっているわけではない。いろいろ複雑に絡みあっていて、そのために……起こった問題とだけ答えておこう」
「複雑な問題だと…?」
何かを察知したライガーンは、一度、ぼくの顔を見てから、更に質問を続ける。
ぼくはただ、ライガーンと元魔術騎士団長のやり取りを見守っていた。なぜなら、魂の入れ替わりで、大変な目にも合ったけれど、もしぼくがリアナの身体に入って、入れ替わっていなければ土砂災害に巻き込まれた時点でリアナの命は終わっていることは予想がつく。一人の女性の命を助けられたことと、ぼくに新しい生き方を教えてくれたリアナ聖女との入れ替わりは、決して後悔はしていないからだ。
むしろ、ぼくには必要な時間だったような気もする。
だからこそ、元魔術騎士団長は魂の入れ替わりの件に関わっていたとしても、彼を責めようとは毛頭考えていない。
「では、もう一つの疑問なんだが、ご懐妊中の皇后陛下の傍にいて……アーノルド殿下がお生まれになった後になくなった女性、イレーネは…………リアナ本人なのか?」
ぼくは、ゴクリと生唾を飲んだ。
ぼくの描いた似顔絵からリアナによく似た女性がラーン帝国にいたというところまでは、わかっているのだ。その女性が……リアナだったということだろうか……。
ぼくは、その返事をあまり聞きたくなかったけれど、真実を知りたい気もする。
「その女性は、リアナ本人ではない。リアナの血縁者ではあるがな」
その元魔術騎士団長の言葉を聞いて、ぼくは静かに息を吐き出す。
緊張のあまり息を止めてしまっていたようだ。
どうやら、ライガーンも息を止めていたのだろう。彼も胸をなで下ろすのが見て取れた。
(そうか。リアナ聖女ではなかったんだな。じゃあ、いつかまた会えるかもしれない)
ぼくは、死んだのがリアナ聖女の血縁者だということも気になったが、一番知りたかったリアナ聖女が死んだわけではないという言葉を聞けただけで、満足だった。
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