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117 やってきた元魔術騎士団長

 ぼく、アーノルド・スラサク・ラーンとライガーンがぼくの執務室にいる時だった。


「失礼致します。元魔術騎士団長のロン殿がお越しです。どうなさいますか?」


「アーノルド殿下。今、ここに入室しても宜しいでしょうか? 私がロン殿を……アーノルド殿下とリアナの魂が入れ替わった直後から、王城にくるように連絡を入れていたのです。何せ、なぜ魂が入れ替わったのかわかりませんでしたので、魔術の知識に長けている元魔術騎士団長を呼び戻そうと声をかけたのです。全く登城しませんでしたがね。」


「それは……ずいぶんと前に連絡を入れていたんだね。もう元に戻ってしまったから、せっかく来てもらったのに申し訳ないくらいだよ」


「いえいえ、すぐに来ないロン元魔術騎士団長が悪いので、お気になさらないで下さい。通してくれ」


 ぼくは、ライガーンと確認していた仕事内容の手を止めて、扉の方を見つめた。

 扉から入ってくたローブを着て、フードを目元まで下げて入ってきた人物を見て、ぼくは急に立ち上がった。


(コイツ……あの時の!!)


 ぼくは、すぐに気が付いた。

 目の前にいるこの怪しげな男性を忘れるはずもなかった。


「ご無沙汰しております。アーノルド殿下、ライガーン殿」


 様子のおかしいぼくに気が付いたライガーンが、ぼくの方を気にかけてくれる。


「殿下。……どうなさいましたか? こちらは、少し昔ですが……皇后陛下がご存命の時、マヤゴン魔術騎士団長の前任者をしておりました元魔術騎士団長のロン殿です」


 ライガーンが説明してくれるが、まだ不気味さを醸し出している男性に警戒を解くことができない。


「お前……いや、ロン殿。なぜ、あそこにいたんだ!」


「……私は、あなたの敵ではないと言ったではないですか……」


 そうだ。ライガーン、マヤゴン魔術騎士団長と……この目の前にいるロン元魔術騎士団長も、ぼくとリアナ聖女の入れ替わりに気が付いていた人物だ。


「すみません……アーノルド殿下……少し、理解できないので、ご説明いただけないでしょうか?」


「あぁ、この人。20年前のベルフォン王国でリアナ聖女としてぼくがフォーレス医院で働いている時に会っているんだ。その時、リアナ聖女の身体の中にいるぼくに向かって『アーノルド殿下』と呼びかけたんだ」


 ライガーンは、目を見開いて元魔術騎士団長のロンをにらみつけ、語気を荒げて尋ねる。


「それは、本当なのか?」

「……あぁ」


 ロンの表情はフードの陰で隠れて読み取れないが、”大したことではない”という意味の声音に聞こえる。

 ぼくは、ぼくの魂とリアナの魂だけでなくこの目の前にいる人物も時代を行き来できていることを理解する。

 しかも、ロンはぼくとリアナ聖女のように魂が入れ替わるわけでもなく、生身の肉体で時代を行き来しているということだ。恐らくだが。


「お前……時空を…時代を移動できるのか?」


 ぼくが聞きたかったことは、これだ。

 時代の異なるリアナとの接点は、皇后陛下の傍にいたイレーネという女性が関わっているというところまでは辿ることができたが、その後の新しい情報を掴めていなかった。


(そうか……時代を自由に移動できる人間がいたのなら……リアナがぼくが入れ替わり時代が入れ替わることも難しいことではないし、不思議なことではないのか……)


 できないと思い込んでいた、時空魔法をこの男は操れるということがわかり、リアナとの入れ替わり現象の解明にまた一歩近づいたような気になった。

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