116 回復魔法の検証
私は、記憶が戻って来るかもしれないと発見された当時の服を触っていたけれど、まだそれ以上は思い出せそうになかった。
「龍の刺繍……このデザインを他でも目にしたら、思い出すかもしれないわね」
私は、そう考え自然と思い出すまで気長に待つことにする。
「そうだわ! 私、ベルフォン王国に帰ってきたのなら、確認しておくべきことがあったわ!」
アーノルド殿下としてしばらくは生きてきたから、うっかり忘れていたけれど……。
「回復魔法が使えるのか検証しておかないと、明日以降の仕事に影響が出てきてしまうわ!!」
しばらく聖女らしい活動をしていない。きちんと使えるのか試しておく必要がある。
「あ~、怖いわね。いくわよ、リアナ!!」
私は決死の覚悟を決めて、裁縫道具の針で指を刺してみた。小さな血が浮き出てくる。
「よし、いくわよ。『回復』」
左手首の魔道具がきちんと発動した感じがする。回復魔法を使用したという記録を取ったようだ。
傷もゆっくりだけれど、塞ぐことができた。
「良かった~!きちんと回復魔法が使えるようになっているわ!!」
どうやら今、傷を治したという回数も魔道具に記録されたようだ。
「ちなみに……アーノルド殿下だった時に習った、風魔法は使えるのかしら」
私は手の平に風の渦巻ボールを作ってみる。
「で、できたわ!! あのマヤゴン魔術騎士団長との練習も無駄になっていないのね!」
私は、少し思案してから窓をあけて目の前の木の枝めがけて、先ほどの風渦巻ボールを投げてみる。少しだけ先を鋭利にして投げつけると、バキバキッと枝に当たる音がする。その後、切り落とされた枝は、真下に落下した。
「すごいわ! 攻撃魔法もそのまま使えるじゃない! 良かった~。学んだことが無駄になっていないわ」
私はラーン帝国で習得した内容がベルフォン王国でも使えそうだと安心した。
■■■
次の日。
私は、フォーレス医院の出勤した。
(本当に……久しぶりだわ! みなさん、お元気かしら)
「お……おはよう……ございます」
私は、ちょっとドキドキしながら医院の扉を開ける。すでに来ていた先輩聖女のとタチア聖女、トッシーナ聖女、そしてシャーリー聖女を見て、思わず涙ぐむ。
「あら! おはよう! もう体調はいいの?」
「今日は顔色いいわね!」
「ほら、そこに突っ立っていないで早く中に入りなさい!」
みんながごく自然に声をかけてくれる。
(アーノルド殿下が私の居場所をきちんと残して……私として生きていて下さったおかげで、また元の生活に戻れるのね。でも、もしアーノルド殿下の身体が魔力植物調査の時に無くなってしまったとしたのなら……ここにいたアーノルド殿下の魂はどこに行ったのかしら……)
アーノルド殿下の安否がわからなくてしばらく私は元気が出ないかもしれない。
医院を開けてから、しばらくすると早速患者がやってくる。
どうやら下痢をしているらしい。
「あのぅ……シャーリー聖女。私が治してもいいですか?」
「え? もちろんだけど……」
私もどこまで自分が聖女として治せるのか挑戦したくなった。
もし治せなかったら、シャーリー聖女にお願いしよう。そう思って、患者に向けて回復魔法をかけてみる。
『回復』
今回も左手の魔道具がきちんと反応する気配があった。多分、治っているはずだ。
「ありがとうございます。お腹の痛みが和らぎました!」
そうお礼を言うと会計を済ませたその患者はすぐに医院の扉から出て行った。
その瞬間。
「リアナ聖女!! あなた、聖女に戻れたの?? 回復魔法が使えなかったじゃない!!」
「え? あぁ、そうなんです。昨日から回復魔法が使えるようになったようです」
「まぁ、それはおめでとう!」
「良かったわね!」
先輩聖女の三人は、手を叩いて喜んでくれた。
(そうなのね……アーノルド殿下が、私の身体に入っていた時は回復魔法が使えていなかったのね……)
やはり、私、リアナとアーノルド殿下と同じ属性の魔法しか使えなったようだ。
ということは、彼は風魔法は使えていたのだろう。
「それで……風魔法なんですが……」
私は、どのような風魔法をアーノルド殿下が使っていたのか先輩聖女に聞いてみる。
「あぁ、風魔法も使えるのでしょう? すごいわね!! また必要な時は手紙をビューーーンと風魔法で届けてね」
「あ……はい」
私は、しばらく室内でこっそり手紙を浮かして、飛ばすという猛特訓をしないといけないなとやるべきことを確認する。
(あぁ。そのやり方もマヤゴン魔術騎士団長に教えてもらうべきだったわね。すぐに身につけばいいのだけれど……)
私は、聖女として医院で働いた後は、アーノルド殿下がリアナの身体の中で使っていたという風魔法の練習に勤しむようになった。
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