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113 皇后陛下の傍にいた人物

 ぼくは、アーノルド・スラサク・ラーン。

 ラーン帝国の第三皇子だ。


 先ほどのライガーンからの説明を受けて、ぼくはリアナとよく似た人物についてこっそり調べてもらうことにした。


 こっそり……というのは、ぼくの母である皇后陛下が不審な死を遂げたと聞かされているからだ。

 母が亡くなったのは三年前だった。詳細はわからないけれど、病気や自死ではなかったらしい。

 母の最期を一目見たくて当時七歳だったぼくは、ライガーンに懇願したけれど……会わせてもらえなかった。


 ライガーンはその時、「綺麗なお母様との想い出を塗り替えたくありません」との一点張りだった。

 当時は、なぜ最期に会わせてくれないのかと大人の事情が腹立たしかったけれど、いろんな使用人たちの話や噂を耳にすると……幼いぼくに会わせることのほうが一生心に傷が残ると考えて会わせてくれなかったようだと子供なりに悟った。それほど、母の遺体は……人間らしいさが残っていない状態だったということだ。


 その後、父である皇帝陛下は母に関する話に箝口令(かんこうれい)を敷いた。皇后陛下の最期を貶めない為に母の話をすることを禁じたのだ。


 その時から、気が付いていた。

 恐らく、事故でもない。多分、母は殺されたのか……あるいは、別の問題があって……人間らしく最期を迎えることができなかったのだろうと。


 それが何なのかは、わからなかったけれど……。


 そこにきて、リアナに良く似た女性も母が亡くなる前に亡くなっているという。

 母の死については箝口令が敷かれているから、こっそりと調べなくてはいけない。

 何か不穏な渦の中にいたのだとしたら……その情報を掴むことで、ぼくだったりライガーン、マヤゴン魔術騎士団長の命が危険に晒される可能性だって出てくるかもしれないと思った。


 まず、リアナに似た人物の名前とどうして母の傍にいたのかということだ。

 母の傍にいた侍女たちで、知っている者がいるかもしれない。


 さりげなく極秘裏に調査するのはライガーンの得意分野だ。

 だから、ぼくはライガーンに調査を委ねて、情報が集まったら教えてもらうことになった。


 ■■■


 数日後、ライガーンから執務室でまた話したいとの連絡がきた。


「殿下。名前がわかりましたよ。イレーネという名前の女性でした。偽名かもしれませんが……」

「ありがとう、ライガーン! そのイレーネの家名は何ているの?」

「家名まではまだわかっておりません。ただ……どうやら皇后陛下のご実家の国、グライカ帝国から連れてこられた人物ということまでわかりました」


 グライカ帝国。


 ぼくは、あまりラーン帝国と仲良くなく対立しやすい関係の西側の国について考えてみた。

 ラーン帝国と仲が悪いからこそ、グライカ帝国が必死になってラーン帝国の皇帝の妃、しかも側妃という立場ではなく正妃である皇后陛下の座を母は狙っていたようだ。

 そこまでして、母がラーン帝国での実権、強い権力を欲していたようなのだ。

 恐らく、ラーン帝国でのグライカ帝国の考えを少しずつ取り入れて、いずれラーン帝国の乗っ取りや侵攻を考えていたのではないかと……今は言われている。

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